こうしたエネルギーブリッジはすでに2000年代の初めには交渉の議題に挙げられていたが、これまでずっと紙の上の話だった。当時日本は電気エネルギー供給を受ける構えになかったが、それは日本が外国との間にネットワークをつないだ経験を有していなかったことだけでなく、日本自体に経済上の刺激がなかったことが原因だった。これが現れたのは福島の原発事故後、日本中のほぼすべての原子炉が一時停止する事態となってのことだ。
国際エネルギー機関(IEA)の前事務局長を務めた田中伸男氏は会議「ガステク(GAZTECH)」の記者会見でこれが日本の外国からのエネルギー供給への依存度を高めたとして、次のように語っている。(英語による発言を和訳)
田中氏はこう述べながらも、アジアの電力ネットワークを結ぶプロジェクトもありえないユートピア的なものだとは考えていないとの考えを示している。田中氏はこのプロジェクトは経済面で正当性を持つだけでなく、二国間に存在する地政学的問題を解決するために諸国間の対話を促すものとなりうると語る。現在、サハリンには新たな汽力発電施設が建てられているが、全工程が完成するとその発電力は360メガワットに達する。これはサハリン島の全住民の電気エネルギーをカバーするだけではない。余剰分を輸出に回すことも可能となる。ロシアエネルギー省はこのプロジェクトを東方経済フォーラムの議題に取り上げ、これに新たな息吹を吹き込むことを決めた。これについてロシアエネルギー省のアントン・イニュツィン次官はスプートニクからの独占インタビューに次のように語っている。
「このプロジェクトは関心を示し、これによって利益を得ることができる諸国があれば実現のチャンスはある。プロジェクトが必要とするのは双方の合意だけではない。投資や技術をひとつにすることだけではない。さらに技術指標、経済指標を入念に調べ上げ、リスクを計算し、調整をどうするか、価格設定をどうするかといった多々の問題の解決が求められる。そうした入念な計算を全て行なって初めて、最終的な決定を採ることが出来るのだ。私の見る限りではこれについて語るのは時期尚早であり、今大事なのは相互のつながりがあり、協力が行えるポテンシャルがあることを口にすることだろう。最も重要なのは経済的な合目的性だ。」