なお同時に安倍首相は、日本の外交・安全保障の基軸は日米同盟であり、「これは不変の原則だ」と述べ、いつものように安全措置をとった。なぜなら先に米国のハーフ国務省報道官を含む報道官たちが、プーチン大統領が日本へ招待される可能性についてコメントし、一度ならずロシアと日本のコンタクト確立に不満を表していたからだ。
安倍首相は2脚の椅子に同時に腰掛けることはできるのだろうか? 日本は隣国の中国、ロシアとの関係拡大の必要性に迫られており、しかも主たる同盟国の米国との関係は損ねないよう努力せねばならない。モスクワ国際関係大学日本学科のドミトリー・ストレリツォフ教授は日本がこうしたジレンマに直面するのは決して初めてのことではないとして、次のように語っている。
またさらに日露関係は建設的なものになるばかりでなく、恐らく高みへ発展し始めるだろう。その理由は簡単だ。ストレリツォフ氏は、米国が現在、日露間の悪い関係が現段階で米国そのものの利益に応えていないのを理解しているからだとの考えを示し、次のように語っている。
「米国は現在、東アジアの地政学的状況の変化、中国の軍事力増強、その他の新たな課題に直面している。そして同地域における露日のパートナーシップは全体的に米国にとって安定要素となっている。また反対に露日の悪い関係は不安定化の要因になる可能性がある。米国はこれをよく理解している。一方で米国は言葉の上では従来通り制裁的レトリックを堅持して日本に対し公に不満を表明しなければならない。しかしこれはよりシンボリック的な措置だ。ロシアと日本のあらゆるコンタクトを禁止するためのものではない。そのため米国の立場が日米関係の『鋭いとげ』になることはない。」
「安倍首相は(2014年の)2月そして今年5月にも基本的に米政府当局者の意見を聞き流したと言うことができる。5月にソチで行われた安倍首相とプーチン大統領の会談がこれを明確に示した。同会談の結果、両首脳は南クリルをめぐる領土紛争への『新しいアプローチ』を実現することで合意した。日本の首相はその前にも米国の呼び止める声に同じような態度を示している。安倍氏は、2014年2月のソチオリンピックの開会式に出席した『G7』で唯一の首脳だった。米国が、そのようなことをしないようにと粘り強く呼びかけたにもかかわらずだ。そして今、ロシアに対する安倍首相の政策路線は他の西側諸国とも対照を成している。この路線は続くのではないかと思っている。」
日本は米国の強い圧力の下で対ロシア制裁に加わったが、制裁は非常に形式的に行われている。一方で安倍首相とプーチン大統領の個人的な会談の数はすでに「1ダース」を超え、日本の首相がロシアのプーチン大統領との個人的な信頼関係に期待していることを反映している。日本は今、まずその希望を経済協力の拡大と結びつけている。日本は経済協力の拡大が領土紛争に日本側にとってプラスの影響を与える可能性があると考えている。その経済牽引力の有効性に対する日本の確信は、ロシア経済の危機によって強まった。一方で日本は、豊かなロシアの極東やシベリア開発への日本からの投資の参加が、自国にとっても有益であると考えている。
なお記事の中で述べられている見解は、必ずしも編集部の立場とは一致していません。