IISSのサミュエル・チャラプ上級職員は語る。
「このプロジェクトは2013年、米露関係が悪く、しかし今よりは良かったときに始まった。報告書で我々は関係悪化を事実として受け入れている。しかし他にも重要な事実はある。米国とロシアはともに太平洋の大国であり、外交や多国フォーマットにおけるキープレイヤーである。その軍事力は地域において他のいずれの軍事力よりも高い。とりわけ将来における経済的な繁栄および安全保障という観点からともに同地域を重視している。もちろんミサイル防衛や米国の二国間同盟、中国へのアプローチに関するコンセンサスの欠如など、不一致点もある。しかし、アジア太平洋地域を欧州・大西洋や中東と比べた場合、両国には対立よりも利益一致点が多い。これが可能性および、あるケースでは対話と協力の必要性を予定する」
アジア太平洋地域において露米の一致点は少なくない。航行の自由、海上安全保障、核不拡散、軍事衝突予防。また、北朝鮮の核開発問題についても、露米の立場は基本的に一致している。また、地域の領土紛争解決をめざした信頼強化への共通の取り組み。経済統合への障壁の除去および既存の地域二国および多国経済同盟間の関係調和。
世界経済国際問題研究所のワシーリイ・ミヘーエフ副所長は、投資・貿易自由化を目指すTPPを含むあらゆる多国プロジェクトが将来的な展開を理解するためにロシアの注意を要請している、と語る。
ロシアの極東開発のための国益という観点からは、たとえば日本との経済協力が非常に重要だ。
安倍首相が言ったように、日本は今や、北方領土問題での進展を期待することなくロシアとの経済協力を発展させる意向である。対ロ経済協力を所管する大臣さえ創設された。12月15日にはプーチン大統領の訪日も予定されている。これは2009年以来のロシア大統領の訪日だ。サミュエル・チャラプ氏によれば、米国は日露接近に反対するものではない。
「バイデン・安倍会談後の共同通信のニュースに注意を喚起したい。米国は露日の関係正常化交渉を歓迎する、というものだ。どうなるかはわからないが、いずれにせよロシアも日本も二国間の政治・経済関係を打ち立てる際に外国に横目を使わずに行動する独立国なのだ」
なお記事の中で述べられている見解は、必ずしも編集部の立場とは一致していません。