これが理由でロシアへの圧力を強めようと、対露制裁が発動された。これでロシア国民は生活が困窮するかと思われたが、結果は国民と権力の連帯を強めただけに終わった。まぁ、さすずめ「ロシア魂はなんとも不可解」というところだろうか。
西側の調査の興味を惹いているのはプーチン氏の驚くほど高い支持率(プーチン氏はすでに数年にわたって支持率80%以上を維持)とロシアの一般の有権者のエリートに対する姿勢だ。現在の路線、体制が支持されていることを直接的に物語るのは9月の下院選挙で「統一ロシア」党が54%を越す票を獲得し、圧勝した事実もそうだ。
このことから、国民の目から見て何がエリートを確固とした揺るぎのないものとしているのか、これを解明する必要がある。これに取り組んだのがロシアの社会学センター「クルィシュタノフスカヤ・ラボ」の調査員たちだ。
センター長のオリガ・クルィシュタノフスカヤ氏は1989年からロシア科学アカデミー社会学研究所のエリート研究センターを率いている。彼女は「統一ロシア」党の党員であったが、2012年、党を一時脱退し、しかもこれからは野党の研究にシフトすると宣言した。
「ロシアの社会エリート」をテーマにクルィシュタノフスカヤ氏の行なった調査の結果は10月7日、本人が「ロシア・セヴォードニャ」(「スプートニク」)で行なった記者会見で明らかにされた。
この社会学、政治学でいうところの「エリート」と「社会エリート」の違いはクルィシュタノフスカヤ氏の調査の第1段階ですでに現れた。世論調査でエリートだとして回答者が挙げたのは政権側の人間、役人、公務員が56%、お金を持っている人、つまり裕福な人間、ビジネスマンが34%、名誉を手にしている人、つまり有名人、スター、ショービジネス界、スポーツ界、TV出演者が30%だった。しかもこのグループには不誠実、汚職、モラルの低さなどネガティブな側面が特徴として挙げられている。特に政治家にこうした粗暴な性格付けがなされた。
調査の第2段階では「あなたにとってはどんな人物が真のエリートでしょうか?」という問いかけがなされた。これに対し47%の回答者が教養の高く、才能あり専門的な人と答え、34%がロシアのために貢献している人、17%が非常に道徳的に高く、誠実さと善良さといった性質を有している人、10%がロシアの精神性の復興に清、ロシア語をも含め、伝統を維持している人と答えている。
だが一番意表をついたのは3度目に行なわれた調査結果だった。3度目の調査では回答者には真のロシアのエリートとは誰か、名前を挙げるよう求められた。その結果、地域、年齢、性別をとわず、いずれのカテゴリーでもダントツでプーチン氏が首位を占めた。2位にはロシア国防省のセルゲイ・ショイグ大臣とセルゲイ・ラヴロフ外相、3位には偉大な医師でメセナのレオニード・ロシャリ氏とレオ・ボケリヤ氏が、4位に入ったのは3人の文化人で映画監督のニキータ・ミハイルコフ氏、俳優でメセナのコンスタンチン・ハベンスキー氏、女優で社会活動家のチュルパン・ハマートワ氏、5位はドミトリー・メドヴェージェフ首相という結果がでた。
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しかも調査で挙げられた50人の人物の中で最も数の多かった専門人集団は15人の政治家だった。調査を率いたクルィシュタノフスカヤ氏は記者団の質問に答え、「一番私を驚かせたのはこんなにも政権が愛されているということでした」と語っている。
ロシアのことわざに「場が人を美しくするのではない。人が場を美しくするのだ」という文言がある。ショイグ氏を例にとれば、その政治キャリアで彼は様々な省を渡りあるいたが、非常事態省にいるときもやはり人気の高い政治家ランキングで高位を占めていた。まさにこうした人物らがヒーローとなり、今のロシアの政治体制の象徴となってゆき、またおそらく、体制の堅い支持率の重要なファクターとしての役割も果たしていくのだろう。
なお記事の中で述べられている見解は、必ずしも編集部の立場とは一致していません。