「日本人にとって五輪は他の大規模な国際イベントと同様常に非常に大きな意義をもってきた。このため五輪に関係したものは全て熱狂的に受け止められている。日本はかなり前から非常に熱心に開催権獲得に取り組んできており、その目的を遂げた大きな功績はもちろん安倍首相という人物にある。それに思うのだが、安倍氏自身、単に日本での五輪開催権を獲得した政治家として歴史に名を残すだけでなく、自ら開催を行ないたいはずだ。あのリオ五輪の閉幕式で周囲をあっといわせた登場だって、彼がこのミッションを個人としてどれだけ創造的に受け止めているかを物語っているだろう。」
一方でキスタノフ氏は、東京五輪は首相就任期間を延長するというこれだけ重要な変更を行なう唯一の理由ではないとして、さらに次のように語っている。
「おそらく一番の理由は安倍氏が2012年に再任してから日本は安定期に入ったからではないかと思う。安倍氏の前までは首相はくるくるとほぼ毎年変わっており、これが内政状況にも経済状況にも非常にネガティブなファクターとなっていた。これに加えて国際舞台における日本の権威の失墜もあった。安倍氏は首相に就任してすでに4年で2期目に突入している。つまり安倍氏とともにあれば日本はあと6年は安定が約束されているのだ。専門家らはもちろん、アベノミクスの効果のほどについて論争を戦わせるが、それでもこうした批判や欠点にもかかわらずアベノミクスは機能している。内政状況も安定している。これにもし、首相の座があるゆえに安倍氏が外交課題をもうまく解決できるのであれば、自民党が安倍氏の全権をあと3年延ばしたいと思っても何の不思議もない。このほか野党の中にも経済面、社会面で安倍氏の向こうをはれる人物はいない。」
「例えば憲法第9条の改正を安倍氏は集団自衛権の新たな解釈で勝ち得ようとしている。2014年日本政府は自衛隊の全権を拡大し、これを日本の領土の外で連合国らを守るために使おうことを許す法案を発案した。ところが基本法の見直しの過程はかなり複雑でこれを終わらせるには時間がかかる。肯定的な結果を出すためには安倍氏には国会の両院の過半数という前提が全て揃わねばならない。ところが日本国憲法の改正には国民投票の結果が必要だ。安倍氏が日本を完全なる軍事大国に変えてしまおうとすることには国内での反対の声は大きい。反対を唱える声は国民のほぼ半数に及んでいる。この課題をとくには日本の首相には追加的な時間が必要なのだ。そうなると安倍氏は2018年までには絶対にこれを間に合わせることはできない。
この他にもなんとしても首相就任期間を延長させねばならない動機がある。たとえば歴代の首相らが目の前にすえてきた国民の総意である、北朝鮮工作員による拉致被害にあった日本人全員を祖国に帰すということもそう。日本国民にとってはこの課題はあまりにもデリケートなものであるために、これをやり遂げた政治家はたちどころにヒーローとなり、歴史に名を残す。他にももちろん最も大きな意味を持つ課題がある。それはロシアとの領土問題を解決するか、せめて交渉プロセスでかなりの前進を図ることだ。」
自民党党則の変更の新案は公式的には日本の政治システムの改革に取り組む党本部の会議で公表される。本部長を務めるのは高村副総裁であり、安倍氏の首相就任期間の延長案を押し出した張本人も高村氏だ。このことからこの案が退けられることはまずないことは疑いの余地もない。なぜならこの場合、時間こそが彼の野心的目的を果たすために最良の友となるからだ。