そのためにプーチン大統領は、買収されたエリートたちがドナルド・トランプ氏を政権につかせることはなく、アンフェアなゲームが行われていると述べて、トランプ氏をあたかも利用しているという。まさにそれによってアウトサイダー候補のトランプ氏は、米社会の抗議の気運を煽っているというのだ。
なお最近、ロシアのソチで、ヴァルダイ・クラブの年次総会が閉幕した。同総会では、主導的な役割を担う世界中の専門家たちが、世界政治やその未来の輪郭を議論している。
「スプートニク」は、ディスカッションクラブ「ヴァルダイ」の責任者で、雑誌「世界政治におけるロシア」の編集長を務めるフョードル・ルキヤノフ氏に、ワシントン・ポスト紙の記事に関するコメントを求めた-
「私には、このような推論を真剣に議論するのは奇妙なことのように思われる。明らかなのは一つ。世界がさらに不可解なものとなり、それを操るのが可能であり、それを操るべきだと思っている人々にとって、さらに操作が難しくなっているということだ。外敵と陰謀についてのこじつけの理論は、その後のカオス(混沌)の責任の一部を解く。これはどこにでもある。しかし今それと同じものを米国でも目にするのは驚くべきことだ。米国は常に自信満々の国だった。かつて米国がこのような意見を述べるのを自分に許したことはなかった。そのため、これは非常に奇妙だ。ロシア大統領はヴァルダイ会議で、クレムリンが共和党員のドナルド・トランプ氏を支持しているというのは『完全なるたわごとだ』と述べた。プーチン大統領はこれを、米国はバナナ共和国ではなく偉大な大国だとして論証した。
プーチン大統領は、ロシアとの関係改善の願望を表明するいかなる候補者も歓迎すると繰り返し述べている。ワシントン・ポスト紙にこのような記事が掲載されたのは、エリートたちの不意を衝いた米社会の予期せぬ変化への反応だ。そしてマッカーシー時代につきものの「魔女狩り」の精神で彼らを行動させるように仕向ける。なぜなら大統領選挙のプロセスは、予測とは全く異なる形で進んだからだ。ルキヤノフ氏は、次のように語っている-
「米大統領選挙でトランプ氏のような候補者が現れたのは、稀に見る現象だ。彼は、このような最も高いレベルに達するべきではない人物のように思われる。しかし彼は現れた。さらにバーニー・サンダース氏もだ。異なるイデオロギーではあるが、本質的には同じことを反映しいている。上から押し付けられているものを引き離そうとする人々の数が増え続けている。これがエリートたちの『昏迷』を呼んだ可能性がある。そしてロシアに対する非難が始まった。プーチン大統領がトランプ氏と一緒にクリントン氏に対抗しているという話があったが、私はマッカーシズム時代以来、米国でそのようなものがあったのを覚えていない。そして実際のところ、米国人はパラノイアの感情にとらわれているのではないかと思い始めた。」
「米国は現時点で、だいぶ前から存在するモデルのある種のパラダイムのシステム的崩壊に達したように思われる。私は、米国がこの内部の危機を克服することを全く疑ってはいないが、回復は何らかの新たな原則に基づいて行われるだろう。他の国と比較した場合、米国経済の発展は十分な説得力を持っているが、米国は現在ある種の(伝統や慣習などを)『打ち破る』時期にある。私たちが目にしているものは、その打破の始まりにすぎない。しかし米大統領選挙で誰が勝ったとしても、それが変わることは全くない。米国のありかたと世界における役割がどうあるべきかについて再考するプロセスは続く。」
与党のエリートたちにとってこのプロセスは痛みを伴う。なぜなら彼らはそれを予期せず、エリートの交代を望んでいないからだ。しかしルキヤノフ氏は、彼らはそれを受け入れることになると考えている。同氏は、次期米大統領の予測を拒否したが、一連の状況をみると大統領になるチャンスはヒラリー・クリントン氏の方が多いと述べた。トランプ氏は、そのスキャンダルの為、チャンスははるかに少ないという。現在、結果を決める5-6の州の票をめぐる決戦が行われている。