一方、防衛省防衛政策局長の前田哲氏は、クリル南部への地対艦ミサイルシステム配備はロシア艦隊の太平洋への展開を確実化するものであり、極東におけるロシア戦略潜水艦部隊の行動圏を確保するためのものである、という見解を示している。
来月プーチン大統領が訪日することを考えると、南クリル岩礁の二島に現代兵器を配備するというのはあまり時宜を得た行動とは言えない、と一部のメディアは報じている。が、高等経済学院・総合ヨーロッパ及び国際研究センターのシニア研究員で、極東研究所の主任研究員でもあるワシーリー・カーシン氏は「これは計画通りのことであり、単に諸島における軍事ポテンシャルを低下させないために行われることである。日本はもう長いこと、ロシアを潜在的な敵国と見なしてはいないし、今、日本との関係は非常に良好に推移している。しかし南クリルはやはり係争領土であり、そこに軍部隊は保持されるのだ。次世代兵器は計画通り、南クリル全域に配備されていくことになる」と話している。
また、極東研究所日本研究センター長ワレリー・キスタノフ氏も、北東アジアの安全保障環境について語った。「今、軍拡競争が起きており、緊張が高まっている。領土問題を含め、大量の二国間係争があり、それぞれ緊迫化している。北朝鮮の核実験は日米韓の三角形による軍事協力の強化の口実になっている。韓国に次いで日本にも米国の対ミサイルシステムTHAADが配備されるという話もある。ロシアが極東における防衛ポテンシャルを強化するのは、主に米国のこうした計画を警戒してのことだ。」
極東研究所日本研究センター上級研究員ヴィクトル・パヴリャチェンコ氏はスプートニクに対し、日本は今回のことをあまり心配しなくてよい、と語った。「なぜ他ならぬ今、このような騒ぎが突如持ち上がったのか。ロシアの東の国境付近における安全保障について決定が下されたのは1年前のことで、公式にも発表されていた。二島へのミサイルシステム配備は、ロシア軍の再装備及び国防ポテンシャル強化戦略の枠内で行われていることだ。1990年代から現在まで、ほとんど本格的な兵器はなかった。今問題になっているミサイルは防衛的なもので、これを攻撃用に作り変えることはできない。もちろん国境強化の意向は主権強化の願望を意味する。しかし、それは、1956年にソ連と日本の間で結ばれた条約をはじめとする国際条約の枠内で、我々が日本と交渉を行えない、ということではない。」
ペルー・リマにおけるAPECでプーチン大統領は、ロシアと日本の間に平和条約がないことは時代錯誤であり、それが両国の前進を妨げている、との見解を示した。「ロシアも日本も平和条約締結を誠実に望み、どうすればそれが叶うか、方法を探している。ひとつ確かなことは、この志向をあらゆる手を尽くして支持しなければならない、ということだ」とプーチン大統領は述べた。
興味深いことに、南クリル諸島におけるミサイルシステム配備のニュースは今日に至っても、ロシア国防省公式サイトに掲載されていない。