元財務副大臣で現戦略立案センター所長のアレクセイ・クドリン氏によると、ロシアと米国を待ち受けているのは雪解けだという。クドリン氏は、一部の対ロシア制裁の影響は近いうちにも緩和され、ビジネス環境は改善するだろうと自信を見せた。「今でもロシアは孤立状態ではありません。米国を含め、すべての国と取引をしています。一定の制限があるにも関わらずそうなのです。もちろん、今後はもっと活発な交流を技術、金融、教育などの分野で行っていかなくてはなりません。」
しかし、誰もがこのような考えをもっているわけではない:懐疑的な見方も存在する。「独立軍事レビュー」編集者のヴィクトル・リトフキン氏は、露米関係に原則的な変化は訪れないと考えている:
「私たちは競合者です。地球上のライバルだと言ってもいい。この事実から逃げることはできません。米国はずっと昔から、世界のヘゲモニーであり続けることを目指し、世界の支配を目指してきました。今もそれは続いていますし、今後も間違いなく続いていくでしょう。確かに、何らかの動きはあるかもしれませんが、米国がヘゲモニーであり続けるという主要な理念を捨てることは絶対にありません。なぜなら、米国にとってこれは単なるイデオロギーではないからです。これにはドルの権威、マネーフローの支配がかかっているのです。ロシアは絶対にこれを受け入れず、納得しません。ですから、米国はロシアと戦うのです。」
一方で、楽観的な見方をしているのが、著名な政治学者で独露フォーラム学術部長のアレクサンドル・ラル氏である:「プーチン大統領と米新政権が、ロシアと西側諸国の対立を収めるための歴史的取引を締結する可能性は十分にあります。現在、米国のミサイル防衛システムはロシアに向けられていますが、私はトランプ氏がこの状況を変えると確信しています。ロシアと米国が重要な国際問題で合意するようになれば、多くの国で反ロシア・ヒステリーは収まるでしょう。米国はこれまでとは全く違う問題の解決により大きな関心を示すようになります。新政権は東欧諸国がロシアを挑発して対立を引き起こし、その後、米国の背後に隠れるような行動を許しはしないでしょう。また、西側諸国とロシアの関係正常化を求めるフランスとドイツの勢力も、米政治家からの支持を得るでしょう。」
これらの予測は、楽観的なものもそうでないものも、時間がその成否を証明してくれる。しかし重要なことは、国家間関係の理論に従えば、ロシアと米国の間には、国家同士の自然な競争を対立や戦争に発展させるような要素は何もないという点である。露米間には領土係争もない。豊富な資源の可能性をはらむ大陸棚をめぐって戦いが進む北極においてでさえ、ロシアと米国はお互いに対する領土請求をしていない。経済においても深い矛盾はない。これは単に貿易関係のレベルが恐ろしく低いからに他ならない。イデオロギーでさえも、原則的に解決不可能な相違はないのだ。