ロシア科学アカデミー極東研究所、日本調査センターのヴァレリー・クスタノフ所長は、露日首脳交渉では領土問題の解決は図られることはまずないものの、一歩前進はあるとの見方を示し、次のように語っている。
「両国の外務省、経済省間のコンタクトはこの訪問を機に活発化した。エネルギー、農業、都市インフラの最新技術の輸出などロシア極東方面に有益な多くの分野での相互関係のプロジェクトが公表されている。より将来性の高いおよそ30の具体的なプロジェクトがあるという情報も入っている。このうちの多くが訪日時に調印される可能性がある。
島に関しては日本はもちろん自分の側に都合のよい領土問題の解決を経済協力とは直接関係づけていない。なぜなら日本自体がロシアとの経済協力拡大に関心があるからだ。日本にとっては保証のついたエネルギーの安定供給源が必要であり、ロシアの消費市場が必要だ。日本はロシアへのインフラ輸出にも関心を抱いている。これらすべてが長期に渡り停滞状態にある日本経済の発展に新たな弾みをつける可能性がある。」
「諸島でどういった合弁企業ができるかという問題は非常に難しく深刻なものだ。その昔、温泉地にホテル建設という提案があったが、こういったことはそれぞれのビジネスに儲けになる云々という話にとどまらない。 日本にとってはクリル諸島は非常に繊細な問題だ。
今、安倍首相が行っていることはある意味ではすごい功績なのだ。こうした条件下で対露関係を改善したいと公言した日本の首相は彼が初めてなのだから。しかもこれは彼の本心なのだ。安倍氏がどれだけの抵抗を克服せねばならないかは想像に難い。だからこそ、今回の訪問にあまりに大きな期待を前もってかけてはならないと思う。いずれにせよ互いへの歩み寄りはあると思う。」
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ公式報道官は数日前、「我々は二国間貿易経済投資協力の拡大計画の進展に期待している。(訪問時の署名用に)かなりの量の文書が形成されており、最終段階に入っている。もちろんその結果を待っている」と語っている。
いずれにせよ、政治と経済の区分を否定してはならない。これは日本の政治家らが表明したことだが、こうした区分はロシアにも日本にもまた露日関係全体にとっても益をもたらしうるものだからだ。