「日本はアジア太平洋地域の重要なパートナーだ」-プーチン大統領が日本企業トップらにこう指摘すると、緊張感が支配していた会場の空気が一気に和んだ。経団連の榊原定征会長も「両国の信頼関係を醸成することが、平和条約締結につながる」と総括した。
ロシア穀物企業幹部は日本に来て印象が変わったと指摘した:「日本人の食事といえばコメと魚介類のイメージしかなかったが、ジャガイモの需要が大きいことが分かった」。日本の大手物流幹部はビジネス拡大に意欲を見せ、「ロシアは怖いイメージがあった。もっとお互いを知ることが重要だ」と応じた。
露日両政府が16日合意した企業の経済協力は、ふたを開けてみれば当初想定の2倍を超える68件に膨らんだ。ロシアの関心が高いエネルギー分野が3分の1近い20件、極東振興分野も14件に上り、関係者は「領土はだめだったけど経済は合格点だ」と自画自賛した。
実は経済協力案件の積み上げは難航。10月中旬、ロシアに制裁を科す欧米を気にして大手商社やメガバンクは及び腰で、経済産業省幹部は「一日中企業に頭を下げて回っているよ」と苦笑していた。交渉筋が「直前にも米国の圧力で案件が減らされそうになった」と明かすように曲折を経たが、最後は安倍首相の強い決意に民間企業が引き込まれていった形だ。
ただ、経済制裁が続くロシア向けの投資拡大にはおのずと限界がある。今回、三井住友銀行とみずほ銀行は政府系天然ガス企業ガスプロムへの協調融資を決めたが、米国事業が大きい三菱東京UFJ銀行は参加しなかった。米金融当局の報復を恐れたとみられる。
ロシアには政治的なリスクもある。ある与党議員は「ロシアは環境が厳しく採掘コストは高い。日本企業が投融資を回収できるか心配だ」と早くも不安を漏らした。