とかく勝ち負け図られるロシア大統領の訪日を露上院国際問題委員会、コンスタンチン・コサチョフ委員長はこの勝ち負け評価がまさに今までの露日関係に対するアプローチの根本的誤りだったと指摘。ロシア側の外交、そしてプーチン大統領個人が見事達成したのは、平和条約とクリル問題の話を始めるためにどうしても必要な前提条件は領土ではなく、その逆に関係こそが領土問題調整のための唯一可能な基礎となるということを日本側が聞き入れたことだった。
露日関係に存在するもうひとつ、重要きわまりない問題は姿の見えない第3者の存在と指摘。露日間には政治、経済、安全保障ともに克服できない問題は事実上ない。争いごとはこの2つの国の外側からもたらされる。ロシアとの路線では領土問題をも含め、解決ができるかどうかは全て日本の国際問題における自立度により、ロシアとしては常にパートナーに対して前向きな姿勢をとっており、プロセスを半分たどった地点で相手を待つ用意があるとコサチョフ氏は指摘している。
(イズヴェスチヤ紙、12月25日、露上院国際問題委員会、コンスタンチン・コサチョフ委員長が語る露日協力の展望)
会談の成果とは両首脳が政治と経済の分離に成功したこと。この2つを日本人は常に結合させ、4島のロシア占有は非合法だ、その根拠は第2次大戦の終盤でソ連は対日戦争に参戦し、この諸島を奪ったからだと主張しつづけてきた。
実際は米国およびその連合国が太平洋戦争を行っている間、スターリンは連合国らに対し、露日戦争の敗戦でロシアが失った領土、つまり南サハリンとクリル諸島が回復されるのであれば、唯一それを条件としてソ連は対日戦争に参戦するという条件を突きつけていた。
ところが米国の書いた平和条約案には戦後クリル諸島と南サハリンが誰の手に渡るかについては記述がなかった。1950年代半ば、ソ連と日本は互いに歩み寄ることに成功したが、これを望まない米国が日本が歯舞、色丹の2島返還に合意するのであれば沖縄は返還しないと脅して邪魔をした。
キスタノフ氏は、今、ロシアと日本が経済でも政治でも互いの立場をなんとか近づけようとしていることは、日本がいかに露中軍事協力を危険視しているかを、またロシアも西側から押し付けられている陣営の環から何とかしてすり抜けたいという両国の思惑を物語っていると語る。
(プラヴダ紙、12月21日付け、露日首脳会談を総括して露科学アカデミー極東研究所日本調査センターのキスタノフ所長がPravda.Ruのサイトで生中継で行った解説。ステプショヴァ記者)
「ロスアトム」リハチョフ社長、世耕経済産業大臣、松野文部科学大臣が露日両首脳の前で調印したメモランダムは原子力分野での協力に大きな将来性を開く。
日本はかつて沿海地方のラズボイニク湾に太平洋艦隊を退役した原子力潜水艦の原子炉を長期保存する最新の拠点を作るプロジェクトに参加。こんどはロシアが福島第1原発の災害復興に支援する。両国の経験と知識を基にしたイノベーション核技術を推進する目的で人材とアイデアの交換の可能性を見越している。
露下院(国家会議)地域政治、北および極東ロシア問題委員会の一員、イーゴリ・イゴシン議員は原子力分野の協力について双方ともこの分野では莫大な経験があり、ロスアトムが有する原発の解体で出る放射性廃棄物のリサイクル能力に日本側は関心を示すだろうと確信を表している。
汚染海水の浄化について、ロシア科学アカデミー極東支部化学研究所の所長で極東支部の支部長をつとめるヴァレリー・セルギエンコ氏は化学研究所の開発した合成ナノ吸収剤をとりあげ、効果は福島第1原発をも含め世界中で使用されている類似品を何倍も凌駕すると語る。協力メモランダムはフクシマの放射性廃液の解決を促すことができると語っている。
(プライム・メディア、12月23日)