しかし日本では、政府や社会が日本老年学会の提案を支持した場合、高齢者の定義が現在の65歳以上から75歳以上に10歳引き上げられる可能性がある。日本老年学会によると、日本では今、高齢者と呼ばれる人は生物学的に5歳から10歳若返っているという。だが重要なのは生物学的ではなく、精神的な若返りだ。今の日本の高齢者たちは65歳になっても隠居を望まず、積極的に働く生活を続ける気構えがある。NHKによると、日本老年学会のワーキンググループの座長を務める東京大学名誉教授の大内尉義医師は、「若い労働者が減るなか、現在、高齢者とされている人たちの意識を変えて、社会を支える側に回ってもらう必要があるのではないか」と語った。
市場は現在の状況にすでに反応している。例えば、すべり軸受けの製造を行っている「イソダメタル」は、従業員たちに年金受給開始年齢以降も働き続けることを可能としている。同社は、海上保安庁や自衛隊の潜水艦を含む船舶用の部品を製造している。上層部は65歳以上の従業員と1年間の雇用契約を積極的に結んでおり、正社員の約4分の1が65歳以上だという。
もう一つの例は、プレス板金部品の総合メーカー、加藤製作所だ。同社は、土日休日の工場稼働に伴い、高齢者を活用することにしたという。日本ではさまざまな分野で65歳以上の高齢者を積極的に採用する企業が増えている。
日本では以前から外国人労働者の誘致に関する問題が議論されている。安倍首相は今のところ外国人労働者ではなく、出生率向上と女性および高齢者の雇用に期待している。安倍首相と同じ自民党の著名な政治家、河野太郎氏は数年前、総合的な移民政策を策定するよう政府に提案し、「もし奇跡的に明日出生率を 上げることができたとしても、新生児が大人になるまで20年かかる」と述べた。
一方で、高度な技術や知識を持った外国人専門家のために特別な条件がつくられている。現行の規則によると、高技能の熟練外国人は、通常は10年以上日本に在留する必要があるところを5年の在留で永住権を申請することができる。日本の法務省の報道官によると、ハイレベルな専門家のために最も迅速な「グリーンカード(永住権)」発行システムの一つをつくるために、日本政府はこの期間を3年、あるいはさらに1年に短縮する可能性を検討しているという。これに関する法改正は2017年3月までに行われる見込み。
そして労働力不足を補うためのもう一つの手段は、ロボット化だ。だがこれは別の大きなテーマである。