トランプ大統領とプーチン大統領の会談は、対露関係を改善したいとのトランプ大統領の声明通りに行われ、ロシア大統領府とホワイトハウスの報道担当は、電話会談後の発表で、露米関係改善に注意を向けた。両国の主な協力分野は、ダーイシュ(イスラム国、IS)との闘いだ。
トランプ大統領が28日、アメリカ統合参謀本部に対して30日以内に、ダーイシュとの闘いの新たなプランを提出するようもとめる覚書に署名したことは記憶に新しい。トランプ大統領はシリアでの軍事作戦実行の規則を見直すことを提案し、反テロ連合に加わりうる新たな同盟者を列挙するよう求めている。シリアにおけるロシアとの軍事協力禁止もそろそろ終わりに近いようだ。
2つ目に注意を向けるべき点はロシアと米国のビジネス界の間での互恵的な貿易経済関係の回復であり、その重要性を今回両国首脳らが話し合ったことだ。これは何よりも対露経済制裁の廃止もしくは決断力のある緩和を見込んでいる。露米両首脳の最初の実務的な接触にとってはこのような確認は十分なものだ。それは、これが米国や海外のビジネスに対して、ロシアとの真剣な経済プロジェクトはタブーではなくなりつつあるというシグナルを送っているからだ。
昨年12月のプーチン大統領の訪日では、総額約25億ドルの70以上の経済文書に署名された。これが日本にはロシアとの真剣な経済協力を行なう準備があり、単なるPR活動ではないことを示すのは特にエネルギー産業における大規模プロジェクトだが、しかしそれらのプロジェクトは米国の制裁に直接、もしくは間接的にかかってしまう。この分野におけるブレークスルーはまだ見られないが、経済における真剣なプロジェクト抜きにして政治的対話は進まない。
制裁緩和はまた、ロシアとの燃料エネルギー協力関係が重要な分野である米国自身にとっても利用される可能性がある。同分野の重要性を認識するには、ロシア北極棚における「ロスネフチ」との協力での米エクソン・モービル社の活発さを思い出す価値があるだろう。制裁によって協力関係は中断されたが、現在、米国務長官になったのは、ロシアのビジネスに詳しいエクソン・モービルCEOのレックス・ティラーソン氏なのだ。
米国の関心はシベリアとロシア極東における協力活動からの直接的な商業的利益だけでなく、ロシアと中国の非常に密接な政治的パートナーシップに対して巨大経済プロジェクトによってバランスをとることでもあるのは否めない。ここでは日米の政治上のベクトルは多くの点で一致しているが、経済的利害においては、そうとは言えない。