中国と韓国は、抗議のしるしとして、もし客室からその本が回収されなければ、2月19日から始まった冬季アジア大会参加のため札幌に到着した自国選手達を、アパから別のホテルに移動させると警告した。それ以外に中国国家観光局(CNTA)は、自国の旅行業者に対し、アパとの協力関係を停止し、カタログから同ホテルを削除し、同ホテルに旅行客を送り込まないよう求めた。
当初アパ側は、日本には言論の自由があることを挙げて、客室から本を撤去するのを拒否した。しかしスキャンダルは、歴史問題をめぐる意見の相違をめぐってしばしば生じる日中、日韓関係の悪化に発展する恐れが出てきたばかりでなく、最悪の場合には、2020年の東京五輪への部分的ボイコットにつながる可能性も出てきた。そのため結局、第8回冬季アジア大会組織委員会スポークスマンの言葉によれば、アパホテルは、委員会側に客室からの本の回収を約束したのだった。
1937年12月の南京での出来事について、すでにだいぶ以前から、日中両国の立場は、激しく対立し大きな争点となっている。中国側の資料によれば、およそ40日間で日本軍により、30万人の市民が虐殺され、数千人の女性が暴行されたとのことだが、日本側は、一般市民大量殺害の事実は公式的に否定してはいないものの、犠牲者の数については中国側が示している数字を断固否定している。
スプートニク日本のリュドミラ・ サーキャン記者は、モスクワ・カーネギーセンターでアジアプログラムのリーダーを務めるアレクサンドラ・グーセワ氏に意見を聞いた-
最後に安倍首相が、靖国神社に参拝したのは2013年12月のことだった。終戦70周年にあたる2015年には、彼は参拝しなかったが、未来の世代のの日本人は、隣国の国民を苦しめた事について、もう日本側から謝るべきではないと述べている。
駐日大使を務めた経験を持ち、現在モスクワ国際関係大学教授を務めているアレクサンドル・パノフ氏は「必要なのは、戦争当時の日本の指導部が、戦勝国の手による法廷で裁かれたことだ。それゆえ、そこでの公平性について語るのは難しい」と指摘し、次のように続けた-
「ナショナリズムの現象は、とにかく世界中のあらゆる場所で表面化しつつある。日本、韓国、中国でも例外ではない。当然、中国のナショナリストらの第一の標的となっているのは、何と言っても日本だ。そこには過激な政党もあり、過激思想を持った活動家も存在する。だがこの場合、それは個人の意見であって、公式的立場でも報復主義的現象でもない。なぜなら、少なくとも日本に住む人々の大部分は、紛争を軍事的手段で解決することに反対であり、防衛予算の増額や国の軍国化に反対だからだ。日本の防衛予算の伸びは、増大する中国の脅威のためだと説明されている。中国の軍事予算は、すでに5年間、年10%増加しているが、日本の方はたった2%に過ぎない。その際日本では、いかなる軍事関連法の変更も、世論の厳しい監視を受けるため、安倍首相の行動の可能性は制限されている。」
最後に指摘しておきたいが、アパホテルの元谷代表は以前にも、その反ユダヤ主義的言説が、米国やカナダで批判にさらされている。カナダにあるアパホテルに置かれている雑誌の中で、彼は「ユダヤ人たちは、マスコミや金融、司法といった米国のカギを握る部門を自分達のコントロール下に置き、税金逃れをしている(原文«Jewish people control American information, finance, and laws, and they benefit greatly from globalization because they move their massive profits to tax havens so they don't have to pay any taxes».)」との考えを示した。
この発言は、米国やカナダのユダヤ人社会から激しい抗議を受けている。