元KGB長官の回顧録:日本との領土交渉の新事実が明らかに!

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2017年初め、KGB初代長官イワン・セロフの回顧録がモスクワで出版された。彼は1954年から1958年までKGB長官を務めた人物だ。今回初めて詳細が広く一般に明らかになったソ連史の数ある出来事の中には、「北方領土」をめぐる1950年代末のソ日交渉のエピソードも含まれている。

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日本との関係再建に関する事前交渉は1955年6月3日、ロンドンで在英ソ連大使ヤコフ・マリクが参加して始まった。最初に双方は覚書を交わし、日本側はソ連に南樺太とクリル諸島の返還を要求、ソ連は日本に米国との「安全保障条約」の放棄と米艦船に対する日本の海峡封鎖を要求した。双方にとって、こうした条件はそもそも受け入れられるものではなく、状況は行き詰まっていた。しかし、8月9日、マリクは在ロンドン日本大使館の庭園で行われた日本代表団団長、松本俊一との個人的な会話の中で、突如、ソ連は日本に歯舞諸島と色丹島を引き渡す用意があり、日本に対する日米同盟放棄の要求を引き下げると告げた。松本の回想録によると、松本にとってこの知らせは衝撃だった。どうやらソ連大使は、1956年6月に強硬派のモロトフ外務大臣に代わってドミトリー・シェピロフが外務大臣になった後の原則的妥協を早まって口にしたらしい。シェピロフにはいったいどんな動機があったのだろうか?モスクワは新たなアプローチの代償として何を得ようとしていたのだろうか?セロフによると、米軍基地について日本と取引をする算段だったようだ。しかし、セロフの回顧録に詳細は記されていない。

ふたつ目の出来事は1956年10月、モスクワで行われた鳩山一郎首相とソ連のニコライ・ブルガニン首相の交渉で起こった。10月15日、双方は「二国間関係の早急な正常化のため、共同宣言に署名し」、領土問題を含む平和条約締結に関する交渉を関係正常化後に継続することで公式合意した。署名の準備は全て整っていた。しかし、同じく交渉に参加していていた農林水産大臣の河野一郎が、事実上のソ連トップであったニキータ・フルシチョフとの面談を要望した。フルシチョフは、公式合意が得られた後としては驚くべきことに、これに同意し、10月16日、17日、18日の3回、河野との会談を行った。この後、日本への歯舞・色丹の引渡しに関する項目が、1956年10月25日に署名された共同宣言の本文に追加された。一方で、これを最後の譲歩とし、実際の引渡しは米国が琉球諸島などの日本領を返還した後に実施するとしたフルシチョフの要求は本文には入らなかった。代わりに、ソ連は、日本の国連加盟を支持すること、ソ連領内に残っている第二次世界大戦時の日本人抑留者を全員本国に送還すること、日本の漁師にとって好都合な体制を導入することなどを義務づけられた。共同宣言の本文がこのように大きく変質した理由については、歴史家の間でも一義的な解釈が得られていない。

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しかし、セロフの記述によると、島と米軍基地の交換に関するソ日間の議論は、外務省経由だけではなく、ソ連諜報機関の入っていたKGBを通じても継続された。フルシチョフがモスクワで日本大使と会談したことが伝えられたのは、今回が初めてだ。この問題の議論を任された戦後初の在日ソ連大使イワン・テヴォシャンは、ソ連首相の職を退いて東京に赴任した。これは当時としては前例のない出来事で、ソ連政府がいかに真剣であったかを示している。

その後、日本の現首相の祖父である岸信介首相がフルシチョフの算段をすべて葬り去った1960年1月19日がやってきた。この日、世論の強い抗議にもかかわらず、日本は米国と新たな「安全保障条約」を締結し、これにより、米国による日本全国での軍事基地の使用を許可したのである。1960年1月27日、ソ連政府は「当該の島を日本に引き渡すことで、外国軍が使用できる領土の拡大を促すことはできない」という理由で、日本への島の引渡し問題の検討を放棄すると発表した。ソ連にとってクリル諸島への米軍基地の展開は、たとえ仮定の話であっても、受け入れられるものではなかった。

フルシチョフはどうやら、日本に米国との同盟を放棄させ、この国を中立国に変貌させることは不可能だと悟っていたようだ。しかし、島を日本に引き渡した場合に、これが米国によって軍事基地化されることは、フルシチョフの計画には入っていなかった。

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