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マレーシアと北朝鮮の間に軋轢が起きたのは、殺害時に空港にいたものの、間に合って出国できた4人の北朝鮮人に嫌疑がかけられた直後だった。マレーシア警察のハリド・アブ・バカル主任検査官は「この者らはマレーシアを出国しており、ピョンヤンにいる可能性がある」と発表。マレーシアは北朝鮮大使を送還させ、北朝鮮国民に対するビザなし体制を廃止した。するとこれへの報復として北朝鮮は自国内にいるマレーシア国民の出国を禁じた。北朝鮮は金正男氏殺害の幕裏は韓国と米国の指導部の企てがあるとの見方を示しており、この説を中国駐在のパク・ミョンホ北朝鮮大使は演説の中で公にしている。マレーシア政府は殺害には北朝鮮国民が関与した疑いをもっており、韓国に至っては殺害には金正恩氏自身が直接関係していると疑っていない。こうしたなかでインターポールは金正男氏殺害に関連して4人の北朝鮮国民の指名手配を明らかにした。インターポールの公式サイトに掲載された情報ではこの4人は年齢が32歳から56歳。各人の証明書記載の写真、空港の監視カメラの捉えた映像も載せられた。ただしこれら北朝鮮人らがいかに犯罪に関与しえたかについては明らかにされていない。
北朝鮮共産党の始祖、金日成氏直属のこのほかの子孫らも身の危険を感じていると考えるほうが理にはかなっている。たとえば金正日氏の異母弟、金平一氏(62)。この人は金正恩氏の叔父にあたる。金平一氏は2015年よりチェコ駐在北朝鮮大使の任についている。平一氏は時に正男氏が行ったような体制批判を例えソフトな形でさえただの一度も行ったことはない。それでも家系状況からして平一氏の身は仮説的には現在の北朝鮮政権の危険に潜在的に晒されている。
もう一人、その命が危険にさらされている可能性があるのは長男の金 漢率(キム・ハンソル)氏(22)だ。ハンソル氏はボスニア、フランスに暮らし、学んでいた。ところが父親の殺害の後、マレーシアへと身元確認のためにマレーシアに到着して後、行方がわからなくなったままだ。
「チョルリマ民間防衛」はサイトに声明を表しており、その中でオランダ、中国、米国および国名は明かしていない第4国にこの一家の保護に人道援助を行ってくれたことに対しての謝意を表している。
ロシア科学アカデミー、極東研究所、朝鮮調査センターの専門家、コンスタンチン・アスモロフ氏はスプートニクからのインタビューに状況を次のようにコメントした。
「彼の息子の身が何らかの危険に晒されているか否かは、誰が何の目的で金正男氏を殺したかに因る。これが北朝鮮の仕業であると思いたければ、そうした論拠はいくらでも見つかるし、韓国がやったという理由づけも簡単にできる。金正恩氏のパラノイアを、つまり煽動を信じるとすれば、本当にハンソル氏は危険に晒されているだろう。なぜならば殺害目的が北朝鮮の支配を最大限拡大し、状況を力によるものへと変える試み、つまり国際社会をして軍事行動へと走らせることであったのならば、これは大きな賭けであり、このアクションを組織した人間らは何をしてもとどまるところを知らないはずだからだ。これを韓国当局が行えるとは私は信じられないが、それでも韓国にはこうした道に十分走りかねない勢力がいることは確かだ。大きな政治は白手袋をはめては行われない。結局、真相がわからないままに終わってしまう可能性もある。どうやらこれは知る人のみが真相を知るという状況のようだ。ただしそれは万人に同じように不快なものなのだが。」