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ロシアの大都市の例に漏れず、ヴォロネジ住民の頭を悩ませているのは交通の不便さだ。渋滞が多く、道路の状態は悪く、駐車場は少ない。結果として、公園がたくさんあるにもかかわらず街がほこりっぽくなっている。運転マナーも悪い。信号が赤になるとわかっているのに交差点に突っ込み、対向車の邪魔をする車が後をたたない。ドライバーは慢性化した渋滞のせいで、「少しでも前に進まなければいけない」という心理状態に陥ってしまうのだ。そんなロシア人のためにYandex(ロシアで人気のITサービス)やGoogleは、渋滞の程度を確認する地図サービスを提供している。例えばYandexの場合、地図上の道路が緑色で示されていれば、車の流れはスムーズだ。混んでいるが車が進んでいる場合は黄色、完全な渋滞は赤で示される。たとえ道路が真っ赤でも、公共交通を嫌って車で通勤する人は多い。
このたびヴォロネジ市には信号システムのトップメーカー「京三製作所」(横浜市)の最新技術が導入されることになった。交通量に応じて自動的に信号を調整して渋滞の解消をはかる、賢い信号システムである。日本の技術はどの程度、渋滞に苦しむヴォロネジ、ひいてはロシアを救うことができるのだろうか?スプートニクは、ロシアの都市交通問題に詳しい、長岡技術科学大学の鳩山紀一郎(はとやま・きいちろう)特任准教授に話を聞いた。
鳩山氏「街の外縁部の渋滞は、日本の信号システムの導入で大幅に緩和することができるでしょう。Yandex地図を見てみると、道路の一部区間だけが渋滞しており、それ以外は流れているような状況が、外縁部には散見されます。このようなケースは、本来もっと道路の容量を活用できるはずなのに活用しきれていないということなので、信号システムの導入効果は大きいです。逆に、街の中心部で、常に面的に渋滞が広がっているような場所だと、渋滞の起こり始めのタイミングを少し遅らせることはできるかもしれませんが、効果は限定的でしょう。こういった渋滞は信号機のせいではなくて、需要に対して道路のキャパシティが圧倒的に足りていないために起こっているのです」
さらに抜本的に渋滞を解消するにはどうすればよいのか。鳩山氏は「大事なのは調査に基づいた計画」と指摘する。
ヴォロネジ市の「賢い信号機」プロジェクトは、それだけで全ての問題が解決できるという魔法の杖ではないが、快適な都市を作るための大事な一つの要素である。起こらなくてよかったはずの渋滞まで起こってしまう現状を食い止めることができたら、日露協力の目に見える成果となるだろう。