その昔、なぜソ連はクリルを買いたかったのか?

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第二次世界大戦前、ソ連は、現在の日本同様積極的に、外交手段によってクリルの島々を手に入れることを目指していたようだ。それらを買い取ろうとさえしたらしい。実際、実現はしなかったが、地政学的交換に関する問題が提起されていた。しかし第二次世界大戦の結果として、クリルの帰属はロシアへと移った。プーチン大統領が表現したように、島の問題についての露日間のピンポンゲームは、そのようにして終了した。

ブレジネフからゴルバチョフまでソ連の4人の指導者に、国際問題補佐官として仕えたアンドレイ・アレクサンドロフ-アゲントフ氏は、自身の回顧録の中で「当時のソ連のヴャチェスラフ・モロトフ外相は、1940年秋のソ日不可侵条約に関する建川美次(たてかわよしつぐ)駐ソ大使との交渉で、次のように指摘したと記している-「この文書は、日本に北方からの安全を保障し、南方での日本の道を開くものだ。他方ソ連にとっては、米国および中国との関係を困難にする。」なおモロトフ外相は、このコンテキストの中で「補償としてサハリンとクリルに関する問題を提起する可能性がある」と付け加えた。これらの資料は、ソ連対外政策アーカイブで提供されたものだ。当時モロトフ氏は、事実上国際問題に関するスターリンの代理人だったが、その彼は、ソ連の世論は、あの頃最も友好的な大国とは言えなかった日本との不可侵条約締結について、露日戦争の際に失われた南サハリンとクリルの返還と結び付けて受け止めるだろうことに、力点を置いている。

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外交工作を総括し、モロトフは、駐日ソ連大使のコンスタンチン・スメタニンに、次のように伝えている-「問題は、よく知られているように、1939年のソ独不可侵条約が、かつて我が国が失った一連の領土を取り返すことにつながった点にある。それゆえ我が国の世論は、日本との不可侵条約締結は、当然、南サハリン及びクリルの島々といった、かつて我々が失った領土を、日本がソ連に戻す問題と結び付けて捉えるだろう。どんな場合でも、少なくとも初めには、クリルの島々の北の一部分の売却に関する問題が提起されるだろう。」

またモロトフ外相は、建川大使との会談の数日後、再び島の売却というテーマに戻り、次のように述べているー「日本には、彼らが必要としていない多くの島があり、一方我々は極東に島を持っていない。それゆえソ連側は、南サハリンとクリルを、しかるべき値段で買い取る問題を提起する可能性がある。もし日本が売却に同意すれば、他のあらゆる問題について合意できるだろう。日本は、南方で行動するのにフリーハンドとなる。なぜなら、よく知られているようにドイツは、ソ連と不可侵条約を結ぶことで銃後を保証し、西部戦線で大きな勝利を得た。」

現実主義的政治家だったモロトフは、率直にこのように述べている。

もちろん、クリルとサハリン買取に関する対話は、すでにソ連世論からかなりかけ離れたもので、ソ連政府は、避けられない戦争の前に、極東においてかつて失われた戦略地政学的国境を回復させ、1年前に欧州でなされたように国境を移動させることを目指していたのだ。当時、ドイツとの間で不可侵条約を結ぶことで、国境を約400キロ、モスクワから西に動かすことができた。多くのロシアの歴史家たちは、この事が、事実上、1941年のドイツによる「電撃的対ソ戦争」を挫折させたと見ている。

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さて日本だが、1940年、ソ連との領土に関する取引をはねつけた。しかし米国と英国は、日本と対決してゆく過程で、1945年2月、サハリンとクリル全体に対するスターリンの要求を支持した。会談の決定文書の中には「ソ連の要求は、日本に対する勝利後、無条件で満足させられるべきだ」と記されている。

英国のウィンストン・チャーチル首相は、この件について「我々は、太平洋にロシアの艦船が現れることを歓迎するだろう」と述べ、極東におけるロシアの利益にすばらしい理解を示した。

最後に指摘しておきたいことは、ある時期、日本もクリル買取について考えていたという点だ。ソ連時代日本で大使を務めたリュドヴィク・チジョフ氏は、ゴルバチョフ時代末期、ソ連が危機的な経済状況にあった時期、日本政府の側から、非公式な形であったが、この件について打診があったと述べている。しかしこの申し出は、拒否された。

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