安倍首相の言葉によれば「洋の東西、その間の多様な地域を結びつけるポテンシャルを持った構想だ」との事だ。 安倍首相がこうした発言をしたのは、東京で催された第23回国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)の晩さん会だった。先に首相は、若干の疑念を晴らすことができれば、日本は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に加盟する可能性も検討すると述べている。日本参加の条件は、あれやこれやの場合でも、事実上同じで、それは取引の透明性、プロジェクト参加者すべてにとっての、そして政府予算の負担でないプロジェックトへの投資の互恵性だ。
5月半ば北京で開かれた国際経済フォーラム「一帯一路」で日本代表を務めたのは、自由民主党の二階俊博,幹事長だったが、彼は中国首脳部と固いパイプを持っていることで有名だ。習近平国家主席は、二階幹事長との会談で、彼を「中国人民の古くからの友人」と呼んだ。一連の国際問題の専門家らは、この会議に他でもないこうした人物を派遣した事は「一帯一路」プロジェクトにおける中国との協力に触れた安倍首相の発言同様、日本政府が対中関係を重要視し、中国政府との関係における新しいアプローチを探っている証だと見ている。
これは、どういう事からきているのだろうか? 第一に、トランプ米大統領と習近平主席が米南部フロリダ州の大統領私邸「マール・ア・ラーゴ」で会談した事が示したように、米中関係が安定化しつつあることだ。米政府は、南シナ海での島の領有権をめぐる問題、その他の問題に関する中国政府との軋轢において、明らかに中国非難のトーンを下げた。専門家らは、北朝鮮のミサイル発射や核問題において、トランプ大統領は絶えず、中国に協力を求めている事を指摘した。「一帯一路」の会議にも米国は、代表を派遣したばかりでなく、北京の米国大使館は、このプロジェクトを担当する作業グループを作るという事だ。こうしたことから日本政府内に、対中関係について、明らかに余りにも不寛容な政策は、日本を孤立化させてしまうかもしれないとの懸念が生じた事も、十分あり得ると思われる。
中国は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)プロジェクトを成功裏に実現しつつあり、その参加国数は77にまで達した。この数字は、日米主導ですでに数十年に渡り存在しているアジア開発銀行(ADB)の参加国数、67を越えている。また現在G7加盟国の中で、AIIBに加盟していないのは日本と米国だけだ。しかし5月16日、安倍首相は、CNBCのインタビューの中で、将来的に日本がAIIBに参加する可能性を除外しなかった。
そしてもう一つ、日本を中国との協力に押し出しているかなり重要な要素がある。それは、北朝鮮の止むことないミサイル実験と核プログラムだ。ロシア極東研究所日本調査センターのワレーリイ・キスタノフ所長は「日本は、北朝鮮の『脅威』を深刻に懸念し、この問題において中国の援助を期待している」と指摘し、スプートニク日本記者の問いに次のように答えた-
そうした要素については、専門家の誰もが認めているが、中には、日本の中国への接近という変化傾向の中に「繊細な戦略地政学的ゲーム」を見て取る向きもある。ロシア外務省外交アカデミー現代国際問題研究所のエキスパート、アンドレイ・ヴォロジン氏も、その一人だ-
「これは日本の戦術ではない。日本政府の新たな地政学的戦略である。日本は、米国への自分達のネオ植民地主義的依存を気に病み始めている。安倍首相は、日本を世界の主要大国へ仲間入りさせ、米中露日クラブにしたいと考えている。当然ながら、これらの国々の間には正常な関係がなければならない、つまり競い合いと協力をうまく組み合わせなくてはならない。北朝鮮の脅威に対する憂慮の念が、こうしたグローバルな目標の中で解決されているのだ。」
絶えず変化している日中間の力関係、そしてアジア太平洋地域における新たな地政学的状況が、独自の役割を演じている。おまけに中国の対日政策は、かなり安定的なままだ。中国は、歴史的問題、その他の原則的問題においては譲歩しないが、国家間の競争を特に強化しておらず、国際空間で日本を圧迫するようなことをしていない。一方日本の中国対する態度も、一朝一夕に根本的に変わることはない。しかし日本は歩む寄りに向かい、アジアにおける自分達の戦略的ライバルへの新たなアプローチを模索しなければならない。恐らく現在、そうしたプロセスが始まったのだ。しかし何らかの決定的な変化までには、今のところまだ遠いと言える。今のところ双方は、今年中の最高首脳会談実施に関してさえ合意できておらず、来年にその作業を延期した。