しかし、自身の最低支持率を更新するチャンスが、毎日高まっている事は、もう明らかだろう。しかし安倍氏の支持者達は、少なくとも野党に比べれば、現状は悪くないと見ている。NHKの5月の調査によれば、安倍氏が総裁を務める与党自由民主党の支持率は38,1%,、一方それに続く野党第一党の民進党は、わずか6,7%に過ぎない。首相支持率が30%を切って初めて、恐らく自民党首脳部は本気で心配し始めるのだろう。
支持率のこうした落ち込みは、安倍氏が打ち出した一連のイニシアチブと関係があるようだ。あらゆることから判断して、世論は、それらを気に入っていない。そうしたものの中には、犯罪の計画段階でも処罰の対象とする共謀罪の趣旨を盛り込んだテロ等準備罪を新たに設ける組織犯罪処罰法改正案、2020年の日本国憲法見直し、さらには加憲による自衛隊の地位の確認などが含まれる。5月の日本経済新聞の世論調査では、組織犯罪処罰法改正案には44%、憲法改正には43%、自衛隊の地位確認には51%の日本国民が賛成した。これを見ると、安倍首相を支持する人々の一定部分が、彼の政策に同意しておらず、その割合が、7から8%とそう少なくないことが分かる。
安倍首相のイニシアチブの公式的な説明について言えば、それらは社会的安全の保障に向けられている。例えば、2017年3月から活発に討議されている犯罪準備に対する罰則強化についての法案は、2020年に東京で開催される夏季五輪の参加者やゲストの安全を保障するための措置だと説明されてきた。
また日本の自衛隊の地位を変更する事については、南スーダンでのように国連の使節として、外国での平和維持活動や反テロ活動に参加する法律的権利を得るためだとの説明がなされている。
しかしそれでもやはり、日本の世論は、こうした問題に慎重な態度を示している。組織犯罪処罰法改正案に対する世論の懸念は、この法案の文言が大変曖昧なことにある。解釈の幅の広さが、政府に、事実上あらゆるグループ、ほぼすべての個人を起訴に持ち込むことができる、中でも、特別に組織されたスパイ的秘密扇動行為の可能性がある場合、厳しい罪に問う事ができる、優れたツールを与えてしまう。
それゆえ安倍首相の政策の中には、少なくとも、日本社会のある部分にとって、国をゆっくりと軍国化へと引っ張ってゆくものが感じられ、不快な様々な恐れを呼び起こすのだろう。名前は違っても、かつての憲兵隊がパブリック・セキュリティやインテリジェンス・エージェンシーという名のもとに、復活するのではないかというわけだ。一般の人間にとって、特別大きな違いはない。
おそらく安倍氏には、遠く将来を見越した目論見はない。しかしそれでも安倍首相のイニシアチブは日本の軍国化を目指す政策と、ある程度類似性を持つ。その事が言うまでもなく、彼のイニシアチブへの世論の支持を下げているのだ。今後一定の条件のもとでは、それが、安倍内閣の支持率がさらに急激に下落する、原因となる可能性もありうる。