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平和条約締結交渉は実際のところ領土問題が議論の中身を占めており、それは予想したとおり袋小路にはまりこんでいる。外務次官たちが次回の協議でこの状況を変えることはよもやないだろう。
日本がブレークスルーとなるような案を考えていないことは、新しい沖縄北方担当相である江崎鉄磨氏の「北方領土問題に関しては素人」という軽率な発言からも見てとれる。江崎氏は、国会での答弁において、官僚が用意した答弁書をチェックするだけで十分だというのだ。また共同通信が伝えたところによると、マニラでの日露外相会談において「河野外相は、日露関係の進展へ積極的に努力する意向を伝え、領土問題の解決を前提とする平和条約締結の重要性に言及し、早期実現へ協力を要請したとみられる」ということだ。これはスタンダードな切り口である。
これはもちろん、安倍首相が昨年ソチで言及した「新しいアプローチ」ではなく、日本政府のいつもの立場である。この、いつもの立場に基づいていては、日露関係にどんな新しい動きも生まれない。それはここ最近何十年の歴史が証明している。
プーチン氏は明らかに、日露関係への関心を失っているようだ。日本はもちろん影響力のある国であり、ロシアは日本と全ての分野で建設的な関係でいなければいけないが、ロシア政府は今、極東における安全保障の問題についてより心配している。
そのことは第一に、ロシア国境における米国の軍事的な脅威と関係がある。戦略的抑止力となっている、オホーツク海に配備されているロシアの弾道ミサイル潜水艦が米国の脅威にさらされている。第二に、朝鮮半島情勢がある。北朝鮮は戦闘準備ができており、米国は何をしだすかわからない。これは将来的な核戦争の震源になってしまうかもしれない。このようなことは、西側諸国からイランとイラクが世界の脅威だとみなされていた中東においてさえ、なかったことである。ロシアと中国はこの状況の中を、何とかうまく切り抜けなければならない。両国は国連安保理で北朝鮮に対する非常に厳しい制裁に賛成し、つい最近、米国議会によって自由に外交を遂行する権利を制限された、すなわち対ロシア制裁強化法案に署名するはめになったトランプ米大統領の顔を立てた。また一方では北朝鮮に対し、米国が北朝鮮に対し軍事介入するのを思いとどまらせるために露中は力を尽くしてきたが、これ以上は限界であるというメッセージをはっきり送った。
こういった外交工作は全て、来たる危機を防ぐためのもので ある。その危機はもしかするとかつてのキューバ危機より深刻になってしまうかもしれないし、戦争に発展する可能性もある。ロシアは日本のことを、こういった外交工作を一緒に展開する相手としてはみなしていない。
アジア太平洋地域における安全保障を担保するシステムの未来の模範となるかもしれないこのプロセスにおいて、今のところ日本の存在感はない。中国とロシアはあらためて、両国の戦略的利益の共通性をはっきりと誇示した。その中露の共通利益は、日本の利益とは一致しないように思われる。
こういった条件の中でクリル問題の討議を含む日本との対話は、それなりの意味は有してはいるものの、プーチン氏の外交問題のスケールを加味すれば、その優先順位は目に見えて下がっている。南クリルでウニを養殖するという話は、今プーチン氏が興味を持っていることではないのだ。