日本人上司とロシア人部下:仕事がうまくいくコツとは?

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ロシアへの販路拡大や進出支援が積極的に行なわれている。日本企業のロシアでの存在感はこれからも増していくだろう。多くの場合、駐在員事務所や現地法人の代表には、本社から派遣されてきた日本人が就任する。そこで今回はロシア人の本音を交えながら、日本人上司とロシア人部下のコミュニケーションについて考えてみよう。

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ロシアに進出して26年になる三菱自動車の正規輸入販売会社「MMC Rus」の中村直哉社長は、コミュニケーションを積極的にとる社交的なタイプのリーダーだ。「決定に対して責任をとるのは自分ですが、何らかの決断をくだすときには常に、ロシア人社員のアドバイスや意見が必要です。ですから同僚とコミュニケーションをとることは非常に大事であり、これは上に立つ人がやらなければならないことです」と話す。「MMC Rus」では定期的にオフィスの全社員に集まってもらい、売り上げや財務状況、達成できたこと、または克服しなければならない課題などについて説明し、可能な限り情報を共有している。中村氏いわく、コミュニケーションを円滑にする秘訣は「最大限オープンでいること」だという。

しかしここまでやるのは簡単そうでなかなか難しい。例えば、自社の財務状況の説明をどうするかだ。一般的にロシア人従業員は、会社に利益があるとわかると給料を上げるよう交渉してくる。もし希望が通らなければ、より高い給料をもらうために転職する。キャリアアップが目的というよりも、目先の給料や待遇だけで転職する人は多い。度重なる給与交渉のわずらわしさから逃れるため、日本人経営者の中にはあえて情報を詳細に公開しないという人もいる。モスクワで管理職として働く日本人A氏は、数か月働いただけの社員に賃上げ交渉をされた。A氏は「短期間の功績だけでは給与増はできない。働きが給与増に本当に見合うのか、ある程度長いスパンで判断しなければいけないし、自分だけで決められることでもない」と困惑する。

いっぽう、会社の中で日本人が一人だけだったとしても、企業理念を浸透させ、良い結果を出せた例もある。製薬大手のエーザイは2013年に販売会社「エーザイ・ロシア」を設立。薬の販売だけでなく、てんかん患者のためのヨガクラス開講やがん患者のリハビリ施設オープンなど、患者の生活の質を向上させる新しいプロジェクトを次々と成功させた。代表の真砂野一彦氏は「私はおしゃべりな方で、皆と話したいのですが、従業員からはなかなか寄ってきてくれません。ですので、たわいもないことでも自分から声をかけるように心がけています。自分から飲みに誘ったりと、日本風コミュニケーションも大事にします。ロシア人というのはメンタル面ではアジア人で、義理人情を理解してくれます」と話す。

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外資系グローバル企業で働くロシア人女性Bさんは「ロシア人上司は感情的になる人が多く、日本人からすれば信じられないような表現で暴言を吐くこともあります。そこへいくと日本人を含め、外国人はビジネスにおいて自分を律しています」と話す。純粋なロシア企業では、全体的な社風というよりも、上司ひとりひとりの個人的な資質によって部下の労働環境が左右されることが多い。モスクワの老舗人材会社「FAVORIT」は、「企業文化や社風について意識しているロシアの会社はわずか2割程度。これはソ連が崩壊してからまだ私企業の歴史が浅いということもあるし、地理的にヨーロッパとアジアの両方にまたがっていて、国民が国全体としての、こうあるべきという理想の姿を持っていない。そのため、全社員がひとつの価値観を共有しにくいのではないか」との見解を示している。

それでは結局、どんな上司が理想なのだろうか?複数のロシア人に本音を聞いてみた。ロシア人女性Cさんは「目をかけてくれているのが伝わらないとやる気をなくしてしまいます。まめに声をかけるなどして、あなたに注意を払っている、というメッセージをはっきり伝えることが大事」と話す。寡黙なリーダーでもよいが、無関心だと思われてはいけないようだ。最近まで日系企業で働いていたロシア人男性Dさんは「日本の会社だけあって時間には厳しくて、5分遅刻しても遅刻は遅刻でした。また、万が一に備えてあれもこれもやっておこう、ということでしょっちゅう『念のための仕事』をやりましたが、実際それが役に立ったことは一度もありませんでした」と振り返る。とは言え職場の雰囲気はよく、大きな不満はなかったという。日本人の用心深さが、ロシア人にとっては余計な仕事、と受け止められることもあるので、なぜそれが必要なのかよく説明する必要がありそうだ。

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日系企業で働くロシア人女性Eさんは「日本人が上司であることのメリットはデメリットよりも多いと思います。上司と部下というよりは、敬意をもって対等な関係として扱ってもらえ、意見を聞いてくれます」と言う。ロシア企業の多くはトップダウンなので、上司と存分に話し合いができることは魅力であるようだ。Eさんは続ける。「上司がどうこう、と言うより日本企業の特徴かもしれませんが、個人的な用事で仕事を抜けないといけないとき、あとでその分の時間を働いて返さないといけません。逆にそれは良い面もあって、残業すればちゃんと残業代がつきます。ロシア企業ではこれはめったにないことです。私は日本のことがよくわかっていますから、勤務時間に対するこういう考え方を理解できますが、普通の人には難しいかもしれませんね」

いわゆる「普通のロシア人」は5分くらい遅刻しても問題はないし、その日の仕事が終わっているのならさっさと帰ってもよい、と考える。これが積み重なると、普通の日本人にはストレスになりそうである。ともあれロシア人は、日本人がロシアで生きることは簡単ではないと非常によく理解している。信頼関係を築き、「この人のロシア生活を少しでも楽にしてあげよう」という気持ちを部下から引き出すことが肝要である。

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