一方ロシア側は日本側のパートナーに、共同経済活動に関する日本との話し合いが空言に終わるなら、TOR南クリルを再開すると何度も言及してきた。そしてTOR南クリルは再開された。自力でクリル諸島を発展するというロシアの信号が出されたのだとキスタノフ氏は見る。同氏は、日本が不可欠な決断を出すと確信している。クリル諸島問題は安倍首相の外交上の優先事項なのだから。TORの枠組ですでにロシアの投資家から最初の申込みが届いたことは特筆すべきだ。
もう1人のロシア人専門家ビクトル・パブリャチェンコ氏も同様の見解を示した。『インフォロス』通信の『TOR南クリル創設は、日本からの領有権主張への答え』と題するインタビュー記事でパブリャチェンコ氏は、TORクリルの実現によって、クリル諸島は地域の経済発展の観点と極東全体の安全保障の観点から、ロシアにとって大きな意義を持つことが示されると主張する。そのためロシアに向けた日本の領有権主張の観点からは、今年9月に予定する露日首脳会談でも外相会談でも、具体的な結果を見込むことはできないだろうと述べる。
このテーマを発展させたのが、『レングム』通信の『粗暴な力か細心の計算か?日本が未来へ向かう道筋は?』と題した8月23日付の記事だ。記事を寄稿したロシア人東洋学者アナトリー・コーシキン教授は日本の現政権が米国との同盟関係を用い、自国の軍事力拡大を狙っていると主張する。コーシキン氏によると、日本経済を回復させるとの安倍首相の公約はポピュリズム的な手段となり、自民党が過半数の議席を得た後、国民の広い支持がないまま安全保障に関する法案など新法を採択することを安倍首相に許した。コーシキン氏は、現日本の非軍国的国家の代替案としての方針に連立与党の大多数が同意せず、安倍首相の夢である日本の平和憲法修正が支持を得ないことを願っている。
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