今年6月末に、日露共同経済活動の可能性を探るため、69人から成る日本の官民調査団が択捉・国後・色丹島を訪問していた。その際、サハリン州のコジェミャコ知事は、日本の企業家たちが島々で快適にビジネスを進められるように最善を尽くすと約束した。その翌月、トルトネフ副首相によって、南クリルに経済特区を設ける計画が表明された。極東発展省は、経済特区に対する企業投資は100億ルーブルにも上るだろうという見通しを示した。
そもそもこの経済特区は、2014年12月に成立した優先的社会経済発展地区に関する法律に基づくものだ。その法によると、この経済発展地区内に企業を置くと、様々な税制優遇が受けられ、自由関税ゾーンのレジームが適用される。また土地活用に関する特別ルールが適用され、オフィスが割安で貸し出されたり、電気・水道などの公共料金が割安になったりする。現在、ロシア極東地域には全部で15の特区があり、日本企業の入居例もある。
上野氏「(TORについての)この決定は、ロシア政府が、2016年12月の日露首脳会談によって合意されたこの地域の日露共同経済活動を、ロシア側の管轄権のもとで行うことを決意したものであると、日本政府は理解する可能性がある。日本政府内では、『北方領土』における日露共同経済活動をロシア側の管轄権のもとで行うことは反対であるという意見が大半を占めているので、この決定は、日本側にとっては、日露共同経済活動の発展の障害になると考えられる」
一方、ロシア高等経済学院のアレクセイ・マスロフ教授は、南クリルに経済特区ができることは、日本に対する具体的な提案であるとみなしている。
マスロフ氏「特区ができることによって、かなり自由にビジネスをすることができるようになる。特定の活動が非課税になるし、企業の登録の簡素化やローンを組む際の優先権などが得られるからだ。経済特区に参加するのは日本企業だけでなくてはいけない、ということでは全くない。しかしこれはもちろんはっきりとした、日本に対するクリルへの招待である。もし日本側がこの招待に応じないのなら、クリルにおける投資についての日本側の数々の約束は、単に口だけだったということになるだろう。なぜなら特区創設は、ロシア側からの、かなり具体的な提案であるからだ。もし日本側が長く返事を引き伸ばすなら、経済特区の恩恵を活用しようとロシア企業が入っていくだろう」
上野教授はまた、この特区が設置されたとしても、「今後、日露両政府が、南クリル地区における日露共同経済活動の進め方について具体的に話し合い、日露双方の立場を害さないという合意に達することができれば、日本企業がこの地域の経済発展に貢献することが可能となるだろう」との見解を示している。