トゥルトゥネフ副首相は6日、記者団に対して「我々はTOR『南クリル』の創設を決めた。書類は1週間以内に整えられると思う。5億ルーブル(およそ9億4500万円)を水産加工に投じようという投資家がいる。ロシアの企業だ」と語った。
2016年12月、露日首脳会談を目前に控えて南クリル諸島での先進発展領域の創設は延期されたことが明らかにされた。当時トゥルトゥネフ副首相は「我々はこれ(TORの創設)にブレーキをかけた。なぜなら両国のリーダーの対話に介入するのは正しくなく、非倫理的だと考えるからだ」と語っていた。
南クリル諸島に先進発展領域を創設するということはロシアはそこで行われるあらゆる経済活動はロシアの法律で行うことを強要するに等しい。これは昨年末のプーチン大統領との交渉を総括した合同記者会見で安倍首相が語った露日の共同経済活動の調整には特別な法律を用いるという可能性を閉ざしてしまう。これを受けて日本サイドも今までは諸島の帰属問題についての自国の立場と矛盾するからという理由で南クリル諸島においてはロシアの法律に従うことは退けてきた。
今回のロシアの決定が島における共同経済活動を日本の条件において行う可能性を閉ざすものであることは明白だ。このアプローチはどうやら、日本が諸島で実現したいと提案したプロジェクトがロシアの意にそわなかったのが原因らしい。
プーチン大統領は4月27日、モスクワで行われた安倍首相との最後の会談の中で、両国は「開始された共同作業を続行し、近いうちにも最優先プロジェクトを列挙する」ことで合意したと語っていた。これを受けて安倍首相も、一連の具体的な合意が達成された語り、両国民がともに魚、ウニの養殖や北方四島の豊かな自然を生かした特殊観光に従事し、島に暮らすロシア人の生活レベルおよび利便性の向上をはかり、島を訪れ、共同経済活動に携わる日本人にとっても多くの新たな可能性が作られるだろうと指摘していた。
ところがミッションの作業の成果はロシア側の気に入るものではなかったようだ。島での二国間経済協力の実務レベルでの話し合いの政治的局面も一切明らかではない。
南クリル諸島での共同経済活動問題の今後の話し合いは7月7-8日、ハンブルグのG20サミットのフィールドで実施されるプーチン、安倍会談の枠内で行われる可能性がある。ところがプーチン大統領が最近表した、日米安保条約から結果として島に米国の軍事施設が建てられる可能性がある以上、日本への島の譲渡は原則的に不可能という声明を背景に、今回の決定は露日平和条約に関する譲歩の可能性をさらにせばめるものとなる。