だが、米国が約束する「核の傘」があるにもかかわらず、北朝鮮の弾道ミサイルがすでに日本上空を通過した。軍事紛争が起こった場合、「パトリオット」という形でのこの「傘」が、日本上空で確実に「開く」保証は実際にあるのだろうか?
軍事専門家のウラジーミル・エフセエフ氏は、「パトリオット」(PAC3)配備による日本の措置について、北朝鮮のミサイル脅威から東京を守るには全く不十分だとの見方を示している。同氏は、それは最も単純な理由によるものだと指摘し、米国のパトリオットはこの目的のためにつくられたものではないからと述べ、次のように語っている-
「迎撃ミサイルシステム『パトリオット』は対空システムであり、ミサイル防衛システムではない。その弾道ミサイルの迎撃能力の有効性はかなり低い。なぜなら射程高度が20キロ未満だからだ。仮にミサイルの危険性のある方向に『パトリオット』(PAC3)が配備されたとしても、例えば政府庁舎が多く集まる地区など、ごく限られたエリアしか守ることができないだろう。『パトリオット』(PAC3)は、日本のあらゆる地点に到達可能な北朝鮮の『ノドン』あるいは『ムスダン』などの弾道ミサイルから東京全体を守ることはできない」。
ではなぜパトリオットは東京に配備されたのだろうか?エフセエフ氏は、次のように語っている-
「このようなシステムは、9.11テロ後にホワイトハウス周辺に配備された。だが私は、これが実際に非常に必要なことであるとは、それほど確信できない。ミサイル防衛に最も効果的なのは、ミサイル発射から数千キロの距離で標的を迎撃できる米国のTHAADやイージスシステムだ。しかし弾頭の迎撃という面では、もし標的が軽量の偽の標的で覆われている場合、これらのシステムの能力も限られる。迎撃は、大気の厚い層でのみ可能となる。なぜなら、より上の層では実際の標的と偽の標的を区別するのが不可能だからだ」。
このような政策は、事実上使い果たされた。そのため、アジア太平洋地域での米国の軍事活動を拡大する代わりに、北朝鮮との交渉プロセスに戻る必要がある。米国をはじめとした国際社会から安全が保障されれば、自ら提案した不可侵に関する何らかの条約に北朝鮮が署名する希望はまだある。したがって、北朝鮮のミサイル脅威から東京を守る手段は、軍事分野ではなく、外交分野で探すべきである。