金正恩労働党委員長はトランプ大統領の就任後、ミサイル発射実験の回数を急増させた。今年1月から単発ないし複数同時に、計15発のミサイルを発射。最も強烈な印象を残したのは、8月29日に発射され日本上空を通過した「火星12型」ミサイルだ。ミサイルは首都平壌郊外のスナン(順安)にある飛行場から発射された。これは、ミサイルの携帯性が向上し、発射台への攻撃に対する脆弱性が下がったことを証拠付ける。
そのうえ北朝鮮は発射毎に、大きくはないが、そのミサイル技術の進歩を示そうとしている。8月26日早朝には短距離ミサイル、7月4日には米西海岸に届く性能を持つICBM「火星14型」と見られるミサイル、5月29日には精度の高い「火星6型」を、3月6日には米国の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)突破技術の開発を目的にした「火星9型」4発の同時発射が行われた。
北朝鮮情勢はオバマ時代の情勢に戻るかもしれない。戻らなければ、ミサイル発射後にシェルター避難を促す日本総務省消防庁の警報システム「Jアラート」が、平時のものになる可能性もある。
北朝鮮のミサイル発射追跡のみを目的とすると米国が謳う米追跡システムが同地域にあり、米海軍の艦船が長年日本周辺海域に配備されているにも関わらず、今年のミサイル15発の発射を一番早く報じたのが、韓国軍の情報を基にした韓国メディアだったのは特筆すべきだ。
第1に、北朝鮮による長距離弾道ミサイルの発射頻度に関わらず、搭載される弾頭や、落下時にミサイルが取る動きは明らかではない。
ロシア科学アカデミー米国・カナダ研究所の副所長を務め、ミサイル技術専門家のパーベル・ゾロタレフ少将が指摘するところ、現在の米MDシステムは朝鮮半島のミサイルに向けられておらず、米国から遠くはなれたところに位置する米空母群に対する兵器である中国の、核・非核弾頭搭載の中距離弾道ミサイルの脅威無効化に向けられている。
問題は、朝鮮半島危機において軍事衝突が起きた場合はどこにミサイルが発射され、核弾頭は搭載されるのかどうか、だ。