これは弾道ミサイルを想定した初めての訓練ではない。今年3月17日には秋田県男鹿市で、Jアラートやスマホに届く発射情報を用いて地元住民110人が公民館や小学校に非難した。
とはいえ、北朝鮮がグアム周辺への発射を無期限に延期したように見えるため、大規模避難訓練の理由は無くなったようだ。それでも訓練は極めて有用だ。訓練で練られた避難スキルは、北朝鮮が偶然にせよ意図的にせよ核・ミサイル攻撃を日本に加えた場合、とても役に立つだろう。
第2次世界大戦、特に広島や長崎への原爆投下の経験が示すところ、犠牲者の数は、空爆から人々が避難する用意ができているかに直結する。広島での大量の犠牲者は突然の攻撃と、空襲警報が出されなかったことに関係していた。そのために多くの人は自宅や開けた場所で核爆発を受けたのだ。とはいえ、隠れる場所はあった。例えば広島にはおよそ4万人を収容可能な地下壕があった。統計によると、広島で特に被害を受けたゾーンである爆心地から半径1500メートルでも、全くけがをせずに生き残った人が1万4500人いた。一部の市民はやはり、防空壕を見つけられたのだ。
第2次世界大戦で米空軍はドイツの諸都市に激しい空爆を加え、建物倒壊の水準は、核爆弾による長崎の建物崩壊に達するほどだった。建物の36%が倒壊・損傷した。ハンブルクは1943年7月24日から8月3日にかけて激しい空爆を受け、建物の48%が失われた。ハンブルクに落とされた全ての爆弾の威力は2発の核爆弾に相当する。一方、市民は多くの地下室や防空壕に隠れ、空爆の犠牲になったのはわずか3.3%だった。
現代日本に核戦争にそなえた大量のシェルターはないが、広島にはなかったものがある。密集した鉄筋コンクリート造りの高層ビルだ。そのうえ、多くに耐震性がある。これらの建物や特に建物内は、ミサイル・核攻撃の場合の最良の避難所だ。避難は迅速に行う必要がある。火星12型や火星14型の到達時間はわずか14分。発射観測、ミサイルの種類特定、警報システム起動の命令に時間を要するため、警報受信後に避難のため残される時間は多くて2、3分以内だ。与えられた時間はわずかだが、これが核戦争の現実なのだ。そのため、短時間で避難所を発見する能力を鍛える訓練がこれほど重要なのだ。
私個人からは次のことを推奨できる。最新の建物はガラス張りだが、核爆発の爆風により秒速700メートル以上で飛ぶガラスの破片は、弾丸に劣らない貫通力を持つ。この危険性を抑えるため、透明なポリマーフィルムで中から全てのガラスをしっかりと貼ることが重要だ。フィルムによりガラスが小さい破片に割れず、爆風は窓を1つのまとまった破片として押し入れるだけになる。これもまた、第2次世界大戦から得られた経験だ。