秋田の貿易会社「薪燃コーポレーション」の柴田興明社長は、「あきたこまち」や味噌・醤油など、王道の和食に欠かせない秋田県の食材をPR。あきたこまちはロシアで2015年から販売開始し、試食販売や調理実演などを通じて売り上げを伸ばしてきた。柴田氏は年内にもモスクワで料理教室「日本のお米のクッキングクラブ」を開催する予定だ。モスクワには約千店の日本食レストランがあるとはいえ、ロシア人が認知しているメニューの種類はまだ限られている。柴田氏は「発酵食品を生かした、日本の一般家庭の料理を自分たちで作って食べてもらいます。ついでにお米などの食材も買えるような場にしたい」と意気込む。
牛肉を焼くひときわ良い香りで来場者の関心を集めたのは、宮城県の農業生産法人「うしちゃんファーム」だ。試食した人からは「今まで食べていた牛肉と全く違う」「美味しいけれど、これは本当に牛肉なの?」「脂が甘い」という声が上がった。ロシアの牛肉は輸入品が多く、それらの多くはかなり硬いのだ。それに比べ「うしちゃんファーム」の牛肉はやわらかいだけでなく、脂に深い味わいがある。牛の飼育期間が30か月以上と長いため、甘みのある脂の味を出せるのだという。
ロシアには和牛輸入の実績はあるが、それらは超高級霜降り肉が中心で、庶民が口にする機会はほとんどない。「うしちゃんファーム」の佐藤一貴社長は「世界中でよく食べられているのは赤身ですし、赤身が主体の短角和牛などの輸出を拡大したいと考えています。ロシアでも様々な所得の人が肉の種類や価格で選択ができるようになれば、もっと食文化が豊かになるはず。ロシア進出には長い時間がかかりますが、ヨーロッパ進出の足掛かりとしても、じっくりやっていきたい」と話す。
青森県産りんごの輸出拡大を目指して2012年に設立された「青森トレーディング株式会社」の大堀秀郎専務は、来月から始まる大規模な収穫を前に、ロシア向けりんご輸出の再スタートをきるため参加した。ここ近年のロシア向け輸出は中断と再開を繰り返し、現在は中断している。実は青森りんごが初めて海外に輸出されたのは1899年(明治32年)で、輸出先はロシア極東のウラジオストクだったのだ。青森りんごはロシアで昔から愛されてきた。アジア人は甘みが強いものを好むが、ロシア人には酸味が強いジョナゴールドなどの品種も人気がある。
ジェトロ・モスクワ事務所の野村邦宏所長は、日本茶がバイヤーの関心を集めている理由について「ロシアではこれまでコーヒーショップがどんどん開店してきました。カフェビジネスを維持して拡大するには新メニューなど色々な新しいものを取り入れていかなければならないので、その一つとして抹茶などを求める人が多いのでは」と話す。実際、抹茶ラテを定番メニューに取り入れている店では、高い人気を集めている。今後、ほうじ茶ラテや玄米茶ラテが流行る可能性もありそうだ。
「ワールドフード・モスクワ」のジャパンパビリオンは、食を通して日本文化を伝えたいという出品者の熱い気持ちと、日本食品の更なる可能性をロシア市場に提示する格好の場となった。出品各社は今後、輸入業者らとの商談を進めていく。