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伴氏「希望の党が自民党に対抗して政権奪取を目指すというなら、対立軸を鮮明にしなければなりません。その対立軸の中に原発政策が入ってくることは、今の状況からすれば自然な流れでしょう。各党の公約を比較すると、原子力発電を推進しようという党はどこにもありません。自民党でさえ原発依存度の低減をうたっています。公明党も公約に原発ゼロを目指すと掲げていますし、立憲民主党・社民党・共産党も原発ゼロの立場です。日本維新の会は、既存の原発は市場競争に敗れてフェードアウトするとみなしています。民間調査では将来的に原発ゼロを求める声は7~8割程度に達しているので、自民党以外の政党が脱原発にまわったことは、世論を反映していると思います」
また伴氏は「自民党は原発を争点にしたくなかった。希望の党の役割は大きい」と指摘している。
政策的方向性を決めることは非常に重要で、脱原発実現の出発点とも言える。とは言え、もし希望の党が政権を取ったとしても、実際の廃炉への道は課題が多い。ロシア国営原子力企業「ロスアトム」の社外相談役で、環境学者のアレクセイ・トロポフ氏は言う。
トロポフ氏「一度原子力発電に足を踏み入れてしまったら、そこから方針転換するのは技術的にも経済的にも至難の業です。廃炉にはとてもお金がかかります。ロシアはチェルノブイリ事故の清算をいまだに続けています。原子力政策は進めるにしても退くにしても、経済的・社会的な利益、国益、自然への影響、そして企業の利益の間を合理的に上手くバランスをとって決めなければいけませんが、それらの利益はいつも互いに矛盾するのです」
今年7月、カザフスタンで行なわれたアスタナ万博において、日本原子力産業協会(JAIF)の前理事長・服部拓也氏は、日本は2030年に向けて、原子力発電の割合を2011年の東日本大震災前のレベルにまで戻したい意向であると明かした。服部氏によれば、原発による発電がほぼなくなったことで、日本は代替エネルギーのために1年あたり約13億円を払っている計算になるという。これに対し、環境保護団体グリンピース・ロシアで、エネルギー政策問題を担当するラシッド・アリモフ氏は首をかしげている。
アリモフ氏「福島第一原発の事故から6年以上が経ちましたが、その事故に関連した問題の多数は未解決のままです。それらがいつ解決されるのか検討もつきません。チェルノブイリもそうです。事故からもう30年経ちましたが、全ての問題が解決したとはとても言えません。日本は原発停止によるエネルギー不足の中でも、それを補いながら6年間を生きのびたのですから、原子力発電の割合を震災以前の3割程度に戻すという目標は、異常に高すぎるのではないでしょうか」