ロシア自動車業界の調査研究・分析を行っている「オートスタート」社のアザト・チメルハノフ広報部長は「2017年の1月から9月までで日野トラック(新車)は750台売れており、2016年の同時期に比べて55パーセントの伸びを見せました。ロシア全体のトラック市場の伸びは47パーセントだったので、それよりも良い数字です」と話している。長く続いたロシア自動車業界の不調は2016年に底を打ち、現在はゆるやかな回復段階にある。
日野ロシアの大森啓之社長はロシア現地法人の立ち上げに関わった後、2015年2月にモスクワに赴任した。業界が低迷する苦しい時期のトップ就任だったが、ロシア人が好む現代音楽や伝統絵画への造詣を深めてロシア人のメンタリティを理解し、ロシア語の習得に励み、ディーラーたちと通訳を介さず会話するなど、ロシア風コミュニケーション術を身につけて親密な関係を築いてきた。そんな折、以前から出ていた組立工場を作る件について、ようやく機が熟した。
工場の着工は2018年の春。稼動開始は2019年を想定しており、小型・中型合わせて年間2000台のトラック生産を見込んでいる。投資総額は10億ルーブル(約18億9千万円)になるとみられる。モスクワ州は大歓迎ムードで、モスクワ州のアンドレイ・ヴォロビヨフ知事は「工場建設地に選ばれ、大変な名誉です。我々ができることは全てやります」と喜びを隠さない。大森氏も「モスクワ州政府にはきわめて親身かつ強力なサポートをいただきました。外資系企業にとって、ロシアの投資環境は良いと感じています」と応じている。
新工場では、ロシア側が切望しているローカリゼーションを積極的に進める予定だ。大森氏は「スタート時はオイル・冷却水や、タイヤ、ディスク、バッテリーなどの現地調達を予定しています。多品種少量生産がネックではありますが、現地調達の品目拡大は今後段階的に検討したいと思います」と話す。
ロシアのトラック市場全体で見れば「ガズ」「カマズ」など国内大手メーカーのシェアがまだまだ高いが、日野トラックは壊れず長持ちする耐久性が高く評価されて信頼を勝ち取っている。ロシア郵便やコカコーラ、ビールメーカーの「バルチカ」、高級スーパーチェーン「アズブーカ・フクーサ」など、数々の大手企業が日野トラックを採用しており、新工場稼動のあかつきには、より競争力が増すだろう。
大森氏は「若くて挑戦を恐れない意欲的なスタッフが沢山いるので、日野ロシアは活気にあふれています。これからも、ロシアの企業市民としてお客様のビジネスに貢献できるよう全力を尽くします」と意欲を燃やしている。