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こうした基地の建設問題はすでに長年にわたって検討されてきており、とくに太平洋艦隊司令部はクリル諸島に軍艦、軍用機の基地を運営する様々な方法を準備していた。元バルト海艦隊司令官のウラジーミル・ヴァルエフ総督いわく、クリル諸島に基地を作る案はソ連時代から様々に構築されてきていた。ところが今回クリンツェヴィチ議員は、逡巡の時代はもう終わり、基地は必ず作られると断言したのだ。
クリンツェヴィチ議員は基地建設案についてほとんど何も明かしておらず、どこの島のどこの湾なのかも明らかにされていない。唯一、クリンツェヴィチ氏が明かしたのは基地は1級のものも含め、いかなるカテゴリーの軍艦をも停泊させることができることだった。1級の軍艦といえばロシア海軍では空母、排水量1万トン以上の対潜艦、対ミサイル艦、原子力潜水艦などの大型の軍艦を指す。
クリンツェヴィチ議員の指しているのはおそらくクリル諸島中央部にある小島、マトゥア島ではないかと推測が可能だ。ショイグ国防相は昨年このマトゥア島について、ロシアは島の復興にとどまらず、積極的な利用を考えていると語っていた。湾も大きな喫水の軍艦の停泊に適している。こうした湾はクリル諸島にはそう多くなく、類似したものといえばイトゥルプ島のカサトカ湾(第2次世界大戦末までは単冠湾(ヒトカップ)湾と呼ばれていた)くらいだ。当時ここには日本帝国軍の第1航空艦隊が置かれており、南雲一航艦長官の司令で真珠湾(パールハーバー)にむけて戦隊が出撃したのもここからだった。
この新たなロシア海軍基地が太平洋艦隊プリモーリェ(沿海州)諸兵科連合小艦隊にとって前進基地となることはほぼ間違いない。プリモーリェ(沿海州)諸兵科連合小艦隊には、「アドミラル・ラーザリェフ」原子力ミサイル巡洋艦をはじめとする5隻を含む第36水上艦艇師団と、第44対潜艦旅団の4隻が所属している。
ロシア科学アカデミー極東研究所のヴァシリー・カーシン上級研究員は、基地建設は何年もかかる一大作業で特に複雑な自然条件や離島である場合はなおさら簡単には進まないとの見方を示している。具体的な海軍基地建設案も、この間に日本との合意によって根本的な変革を迫られるかもしれない。カーシン氏は次のように強調している。
基地の最終的な構成は政治的要因に左右されると思う。それはまさに領土問題についての日本との合意があるか、そのパラメーターによって決まるだろう。