スプートニク日本
全ロシア世論調査センターが今年実施した調査により、レーニンの遺体の埋葬問題はロシア社会でいまだに論争の的であることが明らかになった。回答者の約60%が埋葬を支持し、そのうち一刻も早く埋葬すべきと答えたのは約36%だった。残り約24%は埋葬自体を支持しながらも、「レーニンが明るい未来のための闘争の象徴であった古い世代にはこのテーマはかなりの心痛だ。この世代が生きているうちは埋葬は控えるべき」と考えていることがわかった。また、約32%が埋葬に反対で、現状維持を支持している。今年4月、下院(国家会議)にレーニンの遺体の埋葬についての法案が提出されたが、政府はこの法案を支持しなかった。
「この問題はロシアにとって急務の問題ではなく、支持、不支持を表明する割合も数年間変化がない。レーニンへの肯定的態度は主に2つの要因に規定されると思う。1つは我が国のソ連時代を懐古する気持ちから、2つめには多くは文学や映画を通して形成されてきた、この人物の好ましいイメージによるものだ。レーニンの遺体の埋葬案に対するロシア人の保守的な態度も一部はこれによっても説明がつく。世論調査では大多数が埋葬を肯定したにもかかわらず、彼らはその決定を強行することにも反対している。なぜなら多くの人にとってはレーニンは理想として、歴史上の人物として大事な存在だからだ。それでも社会の大多数がレーニン廟を観光名所として認識している事実も重要だ。これはレーニンのイメージを偶像化することが過去のものとなったことを物語っている。」
レーニンの埋葬に以前から異議を唱え続けているのは共産党員だ。同党のゲンナージ・ジュガーノフ党首はこの案を冒とくと非難し、この問題にある国際的側面に注意を喚起している。「赤の広場とクレムリンはユネスコの世界文化遺産に登録されており、国際的な権威をも含め、同意なしにこれを変えてはならないことになっている。」ジュガーノフ氏はこう指摘している。
ロシア上院(連邦会議)のヴァレンチーナ・マトヴィエンコ議長はレーニンの埋葬問題は将来、国民投票にかけることができるとの見解を持っている。以前、プーチン大統領は「社会を真っ向から対立する陣営に二分するアプローチは取るべきではない。」として、ウラジーミル・レーニンの遺体を埋葬する必然性があるか否かの問題には極めて慎重にあたるべきとの見解を表していた。
ロシア史研究所の主任学術研究員のウラジーミル・ラブロフ氏はこれについて次のような見解を語っている。
レーニン廟は長期保存の遺体を見学できる世界唯一の場所ではない。ただし長期の遺体保存技術は稀有なものとされている。ベトナムの首都ハノイのホーチミン廟の建設、遺体の防腐処理にはロシア人専門家らが加わったし、毛沢東の遺体防腐処理を行った中国人専門家らもロシア人からのアドバイスを受け、晴れて1977年9月9日、天安門広場の毛沢東廟の開設にこぎつけている。ロシア人専門家らが遺体防腐処理の最後の注文を受けたのは、1994年、朝鮮民主主義人民共和国の最高指導者、金日成氏が逝去した時だ。その17年後、同じ錦繍山太陽宮殿に息子の金正日氏が永久保存されている。ふたりの遺体は金の装飾が施された薄暗い大理石ホールの中に安置されている。