5年ぶり日露経済合同会議:ビジネス環境が改善しても、ロシアへの投資が伸びない理由とは?

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28日、モスクワ市内のホテルで、経団連とロシア産業家企業家連盟(RSPP)の共催で日本ロシア経済合同会議が開かれた。同会議は2012年以降5年ぶりの開催となり、経団連・日本ロシア経済委員長の朝田照男氏(丸紅会長)とRSPP会長のアレクサンドル・ショーヒン氏が共同議長を務めた。ロシア政府からはアルカージー・ドヴォルコヴィッチ副首相、ワシーリー・オシマコフ産業貿易次官も参加した。

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複数の日本企業が参加している注目の大プロジェクトといえば、北極圏でガスを液化するヤマルLNGプロジェクトだ。一年のうち8か月は冬で、マイナス60度も珍しくないヤマル半島にLNGプラントを建設し、そこからガスを出荷する。千代田化工建設の堀口宗尚執行役員は「かつて無かったようなチャレンジングなプロジェクト。今月生産を開始し、来月には初出荷します。極寒の地で作業が大変な中、進捗していることを誇りに思います」と話す。輸送面からサポートするのは商船三井だ。氷を割りながら自由に航行できる最新鋭の砕氷船3隻を含む7隻を投入し、北極海航路を利用した輸送にあたる。

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18年間のロシア駐在経験がある三井物産の目黒祐志執行役員は、ロシアへの投資がなかなか伸びない理由として「企業にとって最も大事なのは儲かることです。儲かるかどうかは、経済成長があるかどうかで判断します。中国やインド、東南アジアに比べると、ロシアの経済成長率は劣っている。ロシアは今後、経済改革が避けられないでしょう」と話した。

また目黒氏は、もう一つの理由として「儲かっているという成功体験が少ない」と指摘。ロシア側は投資を呼び込んで「終わり」とするのではなく、企業が長く働きやすい環境を作るべきだと助言した。実際、他の日本企業からの報告では、都市再開発に伴って工場移転を迫られたり、当初想定していなかった新税制の導入が検討されるなど、ロシア進出後のマイナス面が指摘された。

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複数のパネラーの話題にのぼったのは、今年10月に世界銀行が発表した「2018年ビジネス環境ランキング」だ。ロシアは昨年から5位順位を上げて35位を獲得。日本は同ランキングで34位だったので、数字だけ見れば総合的にはほとんどロシアと変わらない、ということになる。しかしこのランキングは投資行動と必ずしも連動しない。中国は78位だが、ロシアと比べて150倍の数の日本企業が進出できている。この理由について目黒氏は「中国は日本語人材が豊富で、知事のビジネス上の権限が大きい」と指摘した。

この他にも日本側からは日本政府が推進する国家戦略「Society 5.0」やロシアの都市インフラ整備の課題、人的交流拡大などについての様々な報告がなされた。

© Sputnik / Mikhail Voskresenskiy / メディアバンクへ移行2018年ウラジオストク経済フォーラムにて、ショーヒン氏と朝田氏
2018年ウラジオストク経済フォーラムにて、ショーヒン氏と朝田氏 - Sputnik 日本
2018年ウラジオストク経済フォーラムにて、ショーヒン氏と朝田氏

朝田氏は「近年ロシアにおいて、小売業など新しい分野で日本企業が堅調な成長を見せている。経団連としてもロシア政府の取り組みを高く評価する」とした一方で、日本企業のTOR(極東中心に整備されている新型の先進経済特区)の利用率が極めて少ないことを指摘。TORや各種経済特区の利用価値を日本企業が理解できるよう、ロシア側によりわかりやすい情報発信をするよう呼びかけた。また朝田氏は、日露間の貿易が伸びない最大の理由の一つは極東のインフラの未整備にあると指摘し、極東の輸出港としての機能や将来的なキャパシティにも懸念を示した。

次回の会議について関係者は「来年にも東京での開催を目指したい」と話している。

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