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例えば、科学技術に起因する福島での大惨事の後、甲状腺がんは日本で最も広くみられるがんではない。これは非常に逆説的だが、世界保健機関(WHO)のデータによると、世界の他の国民よりも、日本人はより多く胃がんを患っている。2007年には、がんによる死亡率を減少させる10カ年計画が日本で承認されるということさえあった。この計画は「がん対策基本法」に基づくもので、指摘されているように、日本のような国であっても、がんは「死因の第1位」なのだ。
何がその原因なのだろうか。「スプートニク」はこの疑問をナタリヤ・マズロワ氏に投げかけた。マズロワ氏は心理学の医師で、WHOの家族問題専門家、ロシアの社会団体「稀少疾患患者・患者支援団体同盟」の主任心理学者も務めている。さらに、英国心理学会の会員で日本でも数多くの助言・指導活動を行っている。
マズロワ氏は、「私が一緒に仕事をしたことがある日本人の言葉を引用すると、彼らは次の命題を非常にはっきりと作り上げている。つまり『日本は病弱者のための国ではない、この国では不平を言わないことになっている』ということだ。そのため病気になって完全な形では働けなくなっても、同情を期待することはできない。周りに不快な思いをさせないよう、できる限り自分で病気に対処しようとする。しかしそれでは、心理的環境について言えば、深刻な問題を引き起こすことになる」と話す。
このことは多くの点で、ロシアの軍事外科医学の父、ピロゴフの考え方に基づく手術を前提とする、革命以前のロシアの軍事医学の原則を思い出させるものだとマズロワ氏は言う。
日本企業が、自社の従業員が重い病気にかかっていることを把握してすらいないということはよくある。日本の国立がん研究センターによれば、日本の全がん患者の約3分の1は働く世代だ。
日本政府はこの状況を変えようと努力している。人的資本が最も貴重だからだ。改正がん対策基本法はトヨタ自動車やパナソニックなどの企業に対し、治療のために最大限調整された快適な環境のもとで従業員が働き続けられるように努力することを義務付けている。そして、その努力は必ずや実を結ぶであろう。現在、日本の国内総生産(GDP)で医療費が占める割合が8.1%たらずであることは偶然ではない。これを背景にすると日本の医療サービスの実績は、同じ目的にほぼ2倍を支出している米国と比べてはるかに良いものにさえ見えるのだ。日本はこの実績を達成するのに、保険会社の利益を禁止し、患者への医療サービスに深刻な欠陥をもたらす医師には報酬を制限するという方策を導入した。