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ソチ市は人口約45万人。2016年には年間650万人の観光客が訪れた。日本ではソチというと2014年の冬季五輪のイメージが強いが、ロシア人にとってソチといえば古くからの「保養地」であり、硫化水素泉があることで有名だ。3食つき500円の格安サナトリウムから、スターリンの命令で建てられ現在は政府が保有する高級サナトリウムなど、あらゆるランクの宿泊施設がある。子どもは無料のところも多い。
各サナトリウムでは、関節の痛みの緩和、糖尿病治療、呼吸機能改善、血行促進、男性・女性機能の改善、美肌など、目的に応じた治療プログラムが提供されており、医師の指導のもとで治療を受ける。
長門市には複数の温泉があるが、本稿では俵山温泉を紹介したい。というのは俵山温泉こそ、日本が世界に誇る驚くべきパワーをもった温泉なのである。
俵山温泉は約1100年前に発見され、長州藩毛利家直営の湯治場だった、由緒正しい名門温泉である。かつての温泉は病院の代わりであり、有馬温泉を愛した豊臣秀吉の例に見られるように、戦の疲れをとり身体を癒す温泉は武将にとって欠かせないものであった。
その研究を引き継ぎ、成分分析とは異なる方法でとうとう科学的根拠を解明したのが、温泉学者で医学博士の松田忠徳氏だ。松田氏は国内だけで約4900か所の温泉に入ったことがあり、「温泉教授」の愛称で知られている。松田氏によると俵山温泉の温泉パワーは「還元力」と「水素力」にあるという。
松田氏「生物は酸化することによって衰えていくわけですが、酸化されたものを以前の状態に戻す反応を『還元』と言います。調査の結果、俵山温泉のお湯は、還元作用(抗酸化作用)が非常に強いことがわかりました。なぜなら、お湯の中に極めて高い濃度の水素が溶存しているからです。水素は地球上で最も小さな元素で、身体の奥深くまで作用します。水素の強い還元作用によって、細胞が活性化するのです。例えば秋から冬にかけて行なったモニター実験では、特に乾燥する季節にもかかわらず、頬の水分量が増えました。活性酸素を還元することでアンチエイジングができるわけです。俵山温泉は、リウマチだけでなく、美肌の湯でもあります」
温泉と言えば湯治よりも観光やグルメがメインという風潮が生まれ、療養目的で温泉街が維持されている場所は残り少なくなってしまった。そんな中にあって、湯治客が絶えない貴重な温泉街のひとつが、俵山なのである。
俵山温泉の湯町には昔ながらの日本家屋が多く残り、派手さはないがレトロで懐かしい雰囲気が漂っている。ほとんどの旅館に内湯がなく、公衆浴場「町の湯」あるいは「白猿の湯」に通っていく「外湯」スタイルが残っている。19日、アナトーリー・パホモフ市長をはじめとしたソチ市代表団は「町の湯」を訪れ、足湯を堪能した。
長門市の担当者は「温泉療法を通じた現役の医師や学生、医療技術といった面での交流も可能性を秘めているのではないか。ソチ市訪問の際には、姉妹提携の締結はもちろん、民間を巻き込んだ代表団を形成し、観光、文化、スポーツなど多面的な交流促進のきっかけにしたい」と話している。