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モスクワで黒沢清監督に一番よく聞かれた問いは「黒澤明監督のご親戚ですか?」というものだった。この問いに黒沢さんは「苗字が同じなんです」と慎ましやかに答えている。スプートニクは黒沢清監督にそれ以外の問いを投げかけた。
スプートニク: 黒沢 さんは映画『セブンス コード』をウラジオストクで撮影されましたので、ロシア訪問は初めてではないですが、 モスクは初めてですね。ウラジオストクと比べて印象はどうでしょう。
スプートニク: ロシア映画はどんなものをご覧になりましたか? ロシアの監督たちのことは何かご存知ですか?
黒沢清:残念ながら新しいロシア映画は日本でなかなか見るチャンスがありません。ちょっと古いもので、多分ロシアの映画を全部からした極一部にすぎないでしょうが、結構大好きな映画が沢山あります。ヴィターリー・カネーフスキイ、アレクセイ・ゲルマン、アレクサンドル・ソクーロフとか…。もうちょっと古いとアンドレイ・タルコーフスキイとか…。みんな相当古い方ですし、ロシア映画全体の中ではかなり偏った人たちだろうと思うのですけど、そういう人たちの映画は大好きで、見ています。
スプートニク:少し前に『旅のおわり、世界のはじまり』という映画をウズベキスタンで撮影されていますね。内容はシルクロードと関係があるのでしょうか。
スプートニク:今回 の映画祭に黒沢さんのホラー映画『予兆』が出ていますね。批評家は黒沢 さんを「夕暮れの巨匠」と呼んでいますが、ご自身はどう思われますか。『予兆』の中に込められたメッセージは何でしょうか。
黒沢清:自分のことはよく分からないですね。『予兆』はホラーの要素もありますが、ジャンルというとSFですね。ただ何でもない日常、日常生活をおくる人々しか出てきません。少しずつ日常変化し、見慣れないものがそこに進入してきて、最後に大きく変わっていくというような物語ですので、怖いところもあります。特に何らかのメッセージを言おうとして作った映画ではありませんが、知らないうちに日常が少しずつ変わっていって、ひょっとすると世界が崩壊してしまう。そういう危険が現代、どこに潜んでいるか分からない。だからよく注意して慎重に生きていかなければいけないというメッセージを観た方は感じてくれるかも知れません。
黒沢清:僕は監督です。大学出たし、学生に映画教えているんですが、僕は教師でも、教育者ではありません。つまりどう映画を教育できるのか全然知らないのです。自分が教えてもらったこともないし。だから僕が若い人に言えるのは、自分がどうしているか、僕だったらこうする、僕の経験からいくとこうだと、自分のことに限られます。映画全体をどう作るかを客観的に教えることが出来れば、それは教育だと思いますが、僕は全体ではなくて自分のことしか分からないので教育者ではありません。でも若い人たちは僕の個人的な経験を聞いて、色々参考にしてくれているようです。
スプートニク:ロシアでは日本の映画、日本ではロシアの映画をたくさん観る機会はありません。この2つの国がもう少し親しくなるために何が必要だと思いますか。
黒沢清:そうですね…。やっぱり例えば映画を通じて、また色々な文化を通して、本当に人と人がこうやって触れ合うことです。観光や旅行に行ってもいいです。僕もモスクワ来て、初めてこんな町だと分かりました。日本にいると分からないですから、国と国がどうするかなど関係なく、人と人が映画や町や色々なもの、食べ物なども通して、どんどん、どんどん勝手に行ったり来たりして知り合ってしまえば、国もついていくのではないかと思います。
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