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フィギュア男子のスターの欠場は観客動員数に影響しかねない。羽生選手の抱えるファン層はおそらく今までにない壮大なスケールを誇るもので、とっくの昔に日本のボーダーを超えている。GPにやってくる観客のかなりの部分をこうした人達が占めていることは、11月16-18日のモスクワ大会でもはっきり示された。
羽生ファンはロシアの、それもSNS上だけをとっても数万人は下らない。ロシアにだってもちろん、自国のフィギュアのスターがおり、国を挙げてエフゲニア・メドベージェワやアリーナ・ザギトワを応援している。だが羽生選手のファンのように全身全霊を捧げてまで応援する忠実さは、おそらく誰も勝ち得ていないのではないだろうか。
羽生選手を一目見たさに、世界のどこで行われようと必ず大会へはせ参じるファンは日本人だけではない。中国人、他のアジア諸国、欧州諸国にだって、それに劣らない、ものすごい数のユヅ・ファンがいる。モスクワ大会ではこれだけの数の羽生ファンが一気に押し寄せることを見越して、モスクワ市警は警戒態勢の強化を迫られた。
メガスポーツ内のお土産ショップも大変な目にあった。ショップは羽生選手の出場にあわせ、膨大な数のくまのプーさんのぬいぐるみ、羽生選手のプラカードなど、4日間は絶対にもつはずだけの在庫を用意して待ち受けていたというのに、初日でそのうちの大半は売り切れてしまったからだ。
そういえばカナダだってこうした事態を予想して、モスクワに劣らぬ数のプーさんをすでに発注済みであることは想像に難くない。このため羽生欠場の知らせはファンだけでない、キオスクの経営者らを相当消沈させたはずだ。
ウインタースポーツやフィギュアスケートはカナダでは特に人気が高い。プラスしてバンクーバーでの大会は中間的なものではなくファイナルだ。このため、なんだかんだと言っても観客動員はできるだろう。組織側の蒙る一番の経済損失はトレーラー数台分のプーさんと羽生プラカードの売れ残りに終わると思われる。
とはいえ、イベントが確実に失うものもある。それは羽生選手を応援する国際的なコミュニティが自分たちのスターが氷上に出るごとに醸す、あの独特の雰囲気だ。どんなに遠い席に座っていようと、自分の投げるプーさんがなんとかリンクの柵を超えて飛んで行ってくれ、と練習をかさねるサポーターたちも、今度ばかりはずっと落ち着いた行動をとるだろう。もちろんこれはイベントにプラスになることはない。
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