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マスコミや学会では、ゲノム編集をめぐる論争が繰り返し勃発しており、例えば、GMO食品は生物兵器になり得るなどといった「ホラー・ストーリー」が必ず付きまとう。スプートニクは、バビロフ一般遺伝学研究所・細胞技術研究室のセルゲイ・キセリョフ教授にコメントを求めた。
スプートニク:ゲノム編集とは何ですか?一般的なGMO食品とは何が違うのですか?
キセリョフ:遺伝子組み換えとは、生物もしくは植物のゲノムにドナーの遺伝子を1つないしは複数、組み込むことを言います。こうした操作はこれまで通り、日本では禁止されています。ゲノム編集も遺伝子組み換えのひとつですが、遺伝子的に異質なものは何も組み込まれないため、安全だと認められています。ゲノムの中でそれ自身の遺伝物質が修正されるのです。つまり、遺伝子の持つ負の影響を減少させたり、逆に有用な効果を増幅させたりするのです。この方法では変異が誘発されることがないため、日本の学者らがこの方法を無害だと考えたのは至極もっともです。
キセリョフ:つい最近、WHOの特別委員会の代表者らが、中国の遺伝学者が行った胚のゲノム編集実験を非難しました。
しかし日本では、2018年9月末、胚のゲノム編集という新しい科学的方向性を制限・禁止する代わりに、これを倫理的かつ透明にするため、ヒト胚のゲノムをどのように編集すべきかのルールが記されました。というのも、科学者たちは、ヒトゲノム編集によって遺伝性疾患が永遠に過去のものになる可能性があると考えているからです。体外受精も実験が始まった当初は「敵意を持って」受け止められましたが、今日ではほぼ当たり前の処置となっており、何百万人もの女性に母親になる幸せを与えています。すべては研究の質と科学に対する責任あるアプローチ次第なのです。
スプートニク:しかし、この発明の利点を科学的に明らかにするには、かなりの時間がかかります。それこそが、多くの人が依然として遺伝子組み換え食品に対して不信感を持ち続けている理由のひとつです・・・
バビロフ一般遺伝学研究所のアレクサンドル・クドリャフツェフ所長は以前、ロシアではEUで行われているようなゲノム編集生物(作物)とGMOの同一視はすべきではないとの意見を述べていた。クドリャフツェフ氏によると、そうした措置は「永遠ではないとしても、大幅な遅れ」をロシアの科学にもたらすと指摘した。
ロシアでは2016年にGMO作物の栽培とGMO動物の繁殖が全面的に禁止されている。