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イデオロギーの問題
自国の国家安全保障の戦略に立脚し、米国は中国が世界秩序を破壊しようとしていると実質的に非難した。これに続き、「貿易戦争」の形態を取った衝突は、米中対立の人質にならないように努める太平洋地域のその他諸国が、米中という経済大国との協力を通じてバランスを取る戦術と国益の実現を選ぶ状況につながる。さらに、そうした諸国は中国の提唱する「一帯一路」と米国のコンセプト「自由で開かれたインド太平洋 」から利益を抽出するつもりだ。
上海国際問題研究所のヤン・チェン教授は「中国が世界第2位の経済大国に変わったとき、米国との衝突は不可避だと明らかになった。日本製品の攻勢に端を発して1970年代に起きた日米貿易戦争との類似性を見出すこともできる。しかし、今回の衝突は貿易の枠内に収まらない。これはイデオロギーの問題、覇権の問題、両国とも深刻な矛盾を抱える世界貿易ルールへのアプローチの問題だ」とコメントした。
シャープは最近、米国向けノートパソコンの生産拠点を中国からベトナムに移す方針を固めたと明らかにした。米国向け複合機の生産も中国からタイへの移行を検討している。一方で中国は貿易戦争における立場を変えず、「犯罪者を叩きのめす」と約束している。中国企業の決意を支持するため、こうした愛国的な歌すら登場した。
矛盾を持った同盟国
今年の日米関係にとって決定的になったのは、 1月にはじまり今まで続く2国間貿易協議だ。トランプ米大統領は5月に訪日した際、日米の貿易収支にプラスに働くだろう2国間貿易協定を8月にも期待していると発表した。2018年の米国の対日貿易赤字はおよそ570億ドルに達した。
米国内での日系企業のビジネス環境、そして同盟国との関係を悪化させないため、日本政府は貿易赤字の削減に向けて譲歩する可能性もある。そうした譲歩には、2019年度防衛関係予算費ですでに発表済みの米国製の武器や兵器の購入数の増加計画がある。日米間には自由貿易協定がなく、その締結条件は日本国内で激しい論争の種になった。
核の脅威
フォーラムに出席した専門家によると、北朝鮮の核軍縮と世界経済への北朝鮮の統合は長期的な問題で、数十年を要する可能性もある。北朝鮮はモデルとして、国家が経済成長を管理する中国とベトナムの経験を調査している。ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所アジア太平洋センターのミヘーエフ所長はそうした見解を示した。
「北朝鮮にとって特に魅力的なのは、地政学的柔軟性と関係構築能力を保っているベトナムだ。ベトナム政府は、ベトナム戦争中の何十年もの敵意とイデオロギー的相違があるにも関わらず米国、コリア、ロシア、日本、 インド、を含む多くの国と関係を構築できた。だが市場経済のレールへの移行、市場開放、通貨分野における制限緩和などは、核兵器の所持が国家の安全保障だけでなく、体制保持のための唯一の道具である金正恩(朝鮮労働党委員長)にとっての政治的不安定要因になりうる」
北朝鮮の核・ミサイル計画問題の解決は、アジア地域の中心で核兵器使用の温床がくすぶっているとき、必要不可欠だ。こうした見方を示したのは法政大学の下斗米伸夫教授だ。下斗米教授によると、これは断じて二義的な問題ではない。リスク防止メカニズムを策定し、六者会合で協議していた参加国全てが、地域の危機管理レベルで貢献できる。
ロシアと日本
今年、ロシアと日本間の信頼醸成を狙いとした交流年が終了する。だが文化・人道分野で信頼が醸成されたとすれば、政治の世界で立場の接近は続かなかった。こうした見方をスプートニクに示したのはモスクワ国際関係大学外交学科長であるパノフ元駐日ロシア大使だ。
「私は平和条約署名の可能性、いずれにせよ年内の実現にはかなり悲観的な態度をとる。ごく最近には、全てが順調に行っているように思えたのにだ。両国の立場に妥協は見られない。だがこうした条約は地域を安定させる役に立つかもしれない。ロシアは中国と素晴らしい関係で、日本は米国と緊密な関係だ。これは全体の情勢にも、一連の地域問題解決にも好ましく反映するだろう。とはいえ交渉は進んでおり、これ自体は前向きに評価すべきだ」