grooves は、IT エンジニアのアウトプットやスキルを可視化、成長を支援するサービス「Forkwell」を運営している。このForkwellのテーマである「IT エンジニアのスキルを可視化する」を課題に、エンジニアが互いに学び合えるプラットフォームの構築を目指した。
参加者に好評だったのは、ハッカソンの進め方だった。参加者のひとり、イリヤさんに話を聞いた。
イリヤさん「今までたくさんのハッカソンに参加してきましたが、このイベントは今までで最も運営が素晴らしく、参加者に対して良い環境を作ろうとしてくれていると感じました。課題を解決するためのサポートの時間が設けられていて、そのタイミングも良かったです。これは僕だけでなく、他の人もみんなそう言っています。やるべき課題が一貫していたので、集中できました。信じられないかもしれませんが、ロシアだと最初にあった課題を途中で変えたりするハッカソンもあるんですよ。せっかく一生懸命やっていたのに、そんなことされたらやる気なくしますよね。そういうときは出された食べ物を食べて、途中で帰っちゃいます(笑)。このオーガナイザーのハッカソンなら、また参加したいです。」
モスクワ工科大チーム、優勝
接戦を制して一位に輝いたのは、モスクワ工科大学のチーム「Fox hound」だ。優勝チームには賞金15万ルーブルのほか、東京にあるgrooves のワークスペースの使用権が与えられた。「優勝できたなんて信じられません。とにかく難しいことだらけでした」と話す4人。リーダーで、大学講師のアントン・ネダガーロクさんと、彼の教え子の学生3人という組み合わせのチームだ。ネダガーロクさんは「ハッカソンには3年前から頻繁に参加しています。ルーティンではない仕事をするのは面白い。これを機会に学生が日本で修士号をとってくれたら嬉しいです」と話してくれた。
クオリティの高さに驚き
grooves海外事業部・新規事業開発室の山下弘喜室長は、ロシア人エンジニアたちの着想が素晴らしかったため、すでに次回開催を考えていると話す。
「ハッカソンの企画は他の外国でもやっていますが、ロシア人のスキルやハッカソンへの取り組み方に、本気度を感じました。最後のプレゼンのクオリティも非常に高く、進んだアイデアが色々と出て、選考に悩みました。今回出した課題は、Forkwellのテーマである『ITエンジニアの技術を可視化する』というものでしたが、優勝したチームは、AI等を駆使し、エンジニアの技術のクオリティが高いのか低いのか可視化し、足りない部分がある場合は、『ここをこうすると良くなる』とアドバイスを与えるという仕組みを考えてくれました。そういう視点は今までになかったので、次にどういうものを目指すべきか、ヒントになります。」
山下氏は、ITエンジニアに限らず、日本で働きたいと考えるロシアの優秀な人材を幅広くサポートしたいと話す。
「1年前に初めてロシアに来て、ビジネスマッチングや文化交流の機会はたくさんありましたが、働く人たちの交流・往来はなかなかありませんでした。日本とロシアは文化的にも接点があるのに、人材が行き来するインフラが整っていないので、それを作らなければいけません。ロシアに、どれほど優秀な人材がいるのか日本企業にアピールするためにも、今回のハッカソンのような実績を形にして見せていくことが大事だと考えています。
日本らしさを楽しむ
イベントの司会者は花火大会のように浴衣に身を包み、参加者には花火をモチーフにしたオリジナルTシャツがプレゼントされた。初日の夜には「宮崎駿の夕べ」と題して、ポップコーンをつまみながら「ハウルの動く城」をみんなで鑑賞したり、寿司や日本のお菓子で一息ついたりと、日本らしさを楽しんでもらう遊び心が随所に取り入れられていた。
SAMIの牧野寛代表は、「運営側も、参加者と同じくらい楽しめた」と振り返る。
牧野氏「今回のハッカソンには想像以上にたくさんの応募があって、びっくりしました。世界的には今、日本のプレゼンスは若干落ちてきてしまっていると思うのですが、そんな中にあっても、ロシアにおける日本のイメージは、とても良いです。ですから、こうしたイベントなどで交流を増やしていけば、日本企業にとっても良い事業機会が生まれると思いますし、ロシアのIT関係者も楽しんでくれると思います。ハッカソンでは、真剣に取り組むのは大前提で、もちろんそれは大切ですけど、せっかく日本企業が主催しているので、日本的なテイストを取り入れたい、というのはありました。結果的に、それが参加者からとても好評でした。私たちは運営側でしたが、参加者と同じくらい楽しめたので、とても良かったです。」
この秋にも、ロシアで様々なスタートアップ関係のイベントが開かれる予定だ。牧野氏は、そのシーズンに向けて、また次のイベントを考えたい、と話している。
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