日本独特のハラスメント
日本には、おそらく、どこよりも多種多様なハラスメントが存在する。世界的に有名なセクハラ(セクシャル・ハラスメント)のほか、パワハラ(パワー・ハラスメント)、モラハラ(モラル・ハラスメント)、アルハラ(アルコール+ハラスメント)、そしてアカハラ(アカデミック・ハラスメント)などがある。ティーンエイジャーの間ではブカハラ(部活動によるハラスメント)が生まれているし、比較的新しい「トレンド」として妊娠、出産、育児をきっかけに起こる嫌がらせ、マタハラ(マタニティ・ハラスメント)もある。
当局もこの問題に取り組み始めた。5月29日、日本の国会は職場でのハラスメント対策を企業に義務づけることを可決した。具体的には、嫌がらせを受けたと発言した従業員を解雇したり、冷遇することを雇用者に対して禁じたのである。
ハラスメントとは、人間の尊厳を傷つけること
インターネットサイト「Statista」のデータによると、2019年11月までに日本人女性の20%が性的暴行を受けたことがあり、さらに20%はセクハラを受けたことがあるという。
性的暴行は刑事犯罪であり、セクシャル・ハラスメントの徴候はある程度はっきりしている一方で、ほかの種類のハラスメントはまだ定義が明確とは言えない。企業のオフィスではハイヒールを履いた女性社員の方が、ヒールを履かない女性よりもエレガントに見えるのは分かる。しかし、女性の健康と快適さもやはり大切であり、だからこそそれを強要することはハラスメントの定義に当てはまるのだ。しかし、ハラスメント被害者が本当に損害を受けたかどうか、ハラスメントという用語を自分の利益のために悪用していないかどうか、その線引きはどこなのだろうか?
別の見方
ほかの大きな現象と同じように、ハラスメントには一連の矛盾があり、それが原因でもっともな批判にさらされてきた。曖昧で幅広い概念であるため、ハラスメントを受けたという告発が悪用されるようになった。
11月8日、日本企業の女性社員の月経に関わるハラスメントを取り上げた映画『生理ちゃん』のロードショーが日本で行われた。この映画に対する反応は一様ではない。同様に一様ではない反応があったのが百貨店の大丸大阪店の女性職員が月経周期を示すために付けるようになった「生理バッジ」だ。
しかし、ハラスメントとそうでないもの、例えば企業ルール、学生や生徒に対する教師の要求、気になる女性に対するやさしい配慮を明確に線引きすることは可能なのだろうか?
何がハラスメントで、何がそうでないのかの定義の問題に国際労働機関(ILO)も乗り出した。ILOは条約制定とハラスメント対策の国際基準策定の必要性を認め、これらが国連総会で議論されるべきだと認めた。
「日本の国によるハラスメント対策は社会の成熟度を示している」
先日、東京地方裁判所は、日本での#MeToo運動のシンボルであるジャーナリストの伊藤詩織さんに元TBSワシントン支局長から受けたレイプに対して330万円の損害賠償が支払われるべきだという判決を下した。
伊藤詩織さん、勝訴です。山口敬之氏から性暴力を受けたとして1100万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は山口氏に330万円の賠償を命じ、反訴は棄却されました。 pic.twitter.com/PMeO3d2Tr9
— 社民党の新聞『社会新報』 (@7AJMnDbRPaYHTBn) December 18, 2019
これはハラスメントの歴史上、前例のないできごとだ。裁判所は判決の根拠として「伊藤さんの行動は社会的利益にかない、性的暴行の被害者を取り巻く状況を改善するためのものである」と述べたのだ。
しかし、各国で行われたアンケート調査では少なからぬ女性がセクハラやその他のハラスメントにあったことが分かっているものの、それを告訴するケースはそれほど多くない。ハラスメントから人々を守る日本の行動は至極論理的だというアンドレイ・ズベロフスキー教授は次のように述べた。「すべてのケースでハラスメントを証明できるわけではありません。この問題に関する法的慣例はまだできあがっていません。そして、多くの女性が恥ずかしいと感じていたり、裁判所に訴える必要はないと考えています。日本では国がこの問題に取り組むようになったことは、社会が成熟していること、ハラスメントから身を守るほどに社会が成長したことを示しています。」
しかし、「ハラスメント」という用語の定義が複雑なことが、ハラスメント対策を後らせている。「ハラスメント」が犯罪として法律に規定されているアメリカでさえも、この問題の規制は簡単ではない。ある行為が軽蔑的であるかどうかは個人の捉え方によって違うので法文化が難しく、影響も目に見えづらい上、状況を記録するのも難しいためだ。
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