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スウェーデンのコロナ対策手法 日本でも利用可能か? ウイルスとその影響、どちらが深刻?

© REUTERS / TT News Agency / Henrik Montgomeryスウェーデン(5月8日)
スウェーデン(5月8日) - Sputnik 日本
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4月末、世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するマイケル・ライアン博士は、スウェーデンの行動モデルが将来の新型コロナウイルス感染症対策の模範となりうると述べた。しかし、なぜスウェーデンなのだろうか?どうして多くの点で類似した政策をとっている国、例えば日本ではないのだろうか?

個人の責任 VS ロックダウン

スウェーデンは異端の国となった。スウェーデン政府のとった政策が正しいと発言することは、すなわち先進国の大多数が実施している厳しい政策が間違っていると認めるのと同じである。今はまだ成功だと判断できる段階にはないが、それでも一定の暫定的な評価は下せるだろう。

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スウェーデンのコロナ対策手法の主眼は新たな環境への適応である。どんなに楽観的な予測でも、新型コロナウイルスのワクチンが完成するのは来年になる。それはすなわち、私たちは長期にわたってウイルスと共存しなければならないということだ。スウェーデンの個人の責任に基づくリベラルなアプローチはここから生まれた。このような体制の方が、厳格な制限措置よりも人々が長く耐えることができるからだ。スウェーデンの主任疫学者のアンデルス・テグネル氏によると、集団免疫を目指す戦略の有効性は証明されている一方で、ロックダウンや厳格な制限措置には原則として科学的根拠がないという。

スウェーデン人の法律を守る性格と、国民と政府の信頼関係の強さは、多くの国の羨望の的だ。スウェーデンでは、50人以上の団体で集まることは禁止されているものの、カフェやレストラン、ショッピングセンター、美容院、保育園、小学校は以前と同じように開いている。当初は同じ道を進もうとしていたイギリスが野党と国民の一部からの強い批判を受けて、戦略を見直さざるを得なくなったのに、スウェーデンは見直しなど考えてもいない。スウェーデンの病院の状況も今のところきちんとコントロールされており、現地メディアによると、患者数が増加した場合に備えて集中治療室の病床も十分に余裕があるという。

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しかし、3500人以上という死亡者数の統計を見ると、スウェーデンが決して最良の状態にあるわけではないことがわかる。

これに対するスウェーデン側の主な反論は、各国で感染流行の速度は違うというものだ。つまり、家から出ず、他人と接触しない人が多ければ多いほど、感染流行はゆっくりと進み、ウイルスを抑え込めているかのような幻覚が生まれる。ロックダウンを永遠に継続することはできないため、多くの国では感染者と死亡者の統計が今後変わっていくだろう。そうなったとき、他国と比較したスウェーデンの数字は今とはまったく違う見え方をするかもしれないというのだ。

スウェーデン・モデルの弱点

スウェーデンの新型コロナウイルスによる死亡者の3分の1以上は老人ホームの入居者(ストックホルムでは死亡者の半数)である。少なくとも90の市町村で、老人ホームで新型コロナウイルスが蔓延したことが明らかになっている。これについて疫学者のテグネル氏は、感染による高齢者の死亡がこの戦略の「最大の問題点」だと述べた。

綿密な分析の結果、不幸が相次いだ原因は福祉医療制度の誤算だったことが分かった。多くの職員の知識不足、防護具の不足、感染リスクのある職場で働く職員に対する定期的な検査の欠如などである。

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このほか、死亡した患者の18%が、国内に64,000人いるソマリア人ディアスポラだったことが分かっている。なかでも、イラクとシリアで生まれた人の罹患率が高かった。社会に十分に馴染めていなかったことから、スウェーデン・モデルの「ブラックスワン」となった移民に特に注意する必要性が明らかになった。

現在、スウェーデンはこれまでの過ちを踏まえ、「模範」の座を目指してさらに対策を進めようとしている。加えて、エコノミストの多くは、厳しい措置がなかったことで、スウェーデンがどこよりも容易に新型コロナウイルスによる経済への打撃から立ち直るだろうと予測する。その一方で「スウェーデン・モデル」が成功したか失敗したかを判断できるのは、もっと時間が経ってからだという点も否定しない。

岐路に立たされた日本

「日本モデル」も日本人の決まりを守る性格と責任感に軸足を置いているはずだが、多くの施設が休業する状況はますますロックダウンを思わせるようになった。また、緊急事態宣言を5月末まで延長するという政府の決定により、新型コロナウイルスよりも制限措置そのものの方がずっと多くの犠牲者を出すリスクが生まれている。安倍首相は14日、39県における緊急事態宣言の解除を発表したが、東京と大阪を含む8つの都道府県では緊急事態宣言が未だに継続している。

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北海道大学の高田礼人教授(人獣共通感染症リサーチセンター)は次のように語る。「命or経済、であれば「命」の方が重要に決まっています。今は、命を守るために、経済を犠牲にしているわけです。しかし、経済が長期間止まることによって、感染自体で亡くなるより人数よりも多くの命が失われるような事になったら、いったい我々は何をやっていたんだろう?という疑問にぶち当たると思います。」

早稲田大学政治経済学術院の戸堂康之教授も緊急事態宣言の継続には反対しており、次のように語っている。「私は、緊急事態宣言を続けることには最初から反対でした。理由は、(1)日本では他国にくらべて感染の被害が拡大していないこと、(2)感染の被害にくらべて、緊急事態宣言による経済的影響が大きすぎ、経済の大幅縮小によってむしろ自殺者が増えたり、財源不足から将来の災害対策が十分に取られなかったりすることで、長期的にはむしろ死者が増えると思われること、(3)学校閉鎖によって子供が教育を受けられないことにより、現在の子供世代が将来長期的に損失を被ると思われること、の3点です。」

戸堂康之教授はまた、スウェーデンの経験を踏まえると、日本は経済のために、厳しい自粛措置を解除する方向に舵を切ってもいいのではないかと言う。「スウェーデンの政策そのものはよいと思いますが、少し死亡者が多すぎるようにも思います。それに比べると、日本は緩い規制にもかかわらず死亡者が少ないですので、もっとスウェーデン的に規制を緩くしてもよいはずだと考えています。」

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ちなみに、日本では、少なくとも地方レベルでは、スウェーデンの論理に沿った動きが始まっている。例えば、5月5日、三重県の鈴木英敬知事は「社会経済活動の再開と感染拡大阻止を両立した新しい道を進む」と宣言し、休業要請を大幅に縮小した。

これまでにユニクロ社長の柳井正氏は、今、ビジネスは政府の支援に頼るだけでなく、自分の責任を理解することが重要だと述べている。とりわけ、コロナ後の世界に備えるにはどこに投資すべきかを意識しなければならないと述べている。

厳しい措置は益よりも害の方がずっと大きい可能性があるというスウェーデンの理論が立証されれば、日本国憲法に緊急事態条項を新設するという議論も無に帰すかもしれない。世論調査によると、当初は日本人の大多数がこの改正に賛成していたものの、後に反対が賛成の数を上回るようになった。日本はこれからこの問題を幅広い議論にかける必要があるだろう。

同時に、スウェーデンの不幸な経験を繰り返さないためにも、日本には依然として、老人介護施設や病院での新型コロナウイルス拡散防止策をどうするのかを考える必要がある。また、外出自粛下での高齢者のメンタル面の悪化を予防することも重要だ。ましてや、日本には65歳以上の人が3,500万人もいるのだ。医療や介護現場でのクラスター感染も依然として定期的に日本のメディアで報じられている。介護施設の一部は一時閉鎖されたものの、職員は高齢者の訪問介護を行っており、感染のリスクは拭いきれない。それに、厚生労働省の指示により、サービスを受ける側がウイルスに感染している可能性があっても、職員は訪問看護を行わなければならない。このほか、医療機関の職員は今、さまざまな困難に直面している。それは差別の問題でもあり、休校で自宅にいる子どもの面倒をみるために休職せざるを得ない職員が多いことによる人材不足でもある。

検査態勢

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日本にとって頭の痛い問題は高齢者の間の感染拡大だけではない。検査態勢の問題も未解決のままだ。検査を受けるための許可を得るのは極めて困難で、検査も治療も受けられずに死亡した人のニュースが何度もメディアで取り上げられている。政府の専門家会議副座長で諮問委員会委員長を務める尾身茂氏は、こうしたケースには何も悪意はなく、不幸な死亡例の原因はより多くの検査をするための人手が不足していることにあると説明する。日本は検査を受けるための条件の緩和し、検査件数を増やすつもりだが、他国に比べればそれでも少ないだろう。検査の必要があるのは重症患者のみと考えられているスウェーデンの経験を見ると、大規模検査はそれほど重要ではなく、本当に検査を必要としている人を特定する精度の方がずっと重要なのかもしれない。

移民については、日本の状況は全く異なる。日本では移民の割合は極めて少なく、スウェーデンと同じように大きな意味を持つとは考えられない。それでも日本はその点にも注意を怠らない。外国人でも東京都の公式サイトで新型コロナウイルスに関する重要な情報を英語で入手できるようになっている。このほか、例えば東京では、毎日日本語と英語で拡声器を使った放送も行われている。

東京オリンピックを巡る問題は日本の評判に大きな影響を与えた。さらに、政府の今の政策を支持しない人の割合は日本国民の中でもかなり高い。しかし、いずれにせよ、死亡者数では日本は他国よりも明らかに状況が良いのは間違いない。この記事の執筆時点では、日本の感染者数は16,300人強、死亡者数は760人程度で、世界のランキングを見ると、感染者数では39位、死亡者数では28位である。刻々と変化する状況の中で、そして類似した行動モデルをとる他国の良い経験や悪い経験を分析した上で、政府がどのような決定をしていくのかが今後の鍵を握る。

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