日本はイージス・アショア導入を断念 米国はどう反応する?

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日本政府は、米国のミサイル防衛システムであるイージス・アショアを自国の領土に配備する計画を断念した。河野太郎防衛大臣は25日、日本政府が計画を断念したのは、同システムから発射されたミサイルの加速装置が住宅地に落下する恐れがあるためだと説明した。スプートニクは、この日本当局の決定に対して米国政府から今後どのような反応が起こりうるのかについて専門家らに見解を尋ねた。

歴史家で政治学者、および国際関係学・日本学の専門家のドミトリー・ストレリツォフ氏は、米大統領選を前にしたトランプ氏が日本に注力していないことから、日本政府にとってそのような策略を講じるのは今が最適な時期だと指摘している。

「米国では今年が大統領選の年だが、国内の状況は激変していることから、トランプ政権にとってはせめて外交政策での成功を示すことが重要だ。トランプ大統領は日本のような重要な同盟国と喧嘩をしたいとはおそらく望んでいない。しかもトランプ大統領は独特のレトリックで、他の国々は自力で自国の安全保障を図るべきだと幾度も強調してきている。」

The US anti-missile station Aegis Ashore Romania is pictured at the military base in Deveselu, Romania - Sputnik 日本
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しかし、このストレリツォフ氏の考えに、欧州国際研究総合センターの副センター長で、米国の外交政策アナリストとして有名なドミトリー・スースロフ氏は賛同していない。スースロフ氏は、日本の米ミサイル防衛システムの配備撤回に対する米国政府の反応は、確実にネガティブなものになるだろうとの見方を示している。

「これは大金が絡む問題であり、米国は自国の武器輸出に細心の注意を払っている。このため、こうした供給に関する契約が頓挫するたび、米国政府は不満を抱く。米国やトランプ政権にとって日本は今まで、米国の武器を定期的に購入し、米国政府と決して喧嘩をしない模範的な同盟国とされてきた。日本政府が米国のミサイル防衛システムの配備計画を中止のは、米政権にとっては青天の霹靂だったと思う。このプロジェクトはトランプ氏就任のずっと前から計画されていたのだから。」

スースロフ氏によると、日本政府は米中の急激な関係悪化を非常に注意深く見守っている。

「米国のミサイル防衛システムの日本への配備計画は、日中関係にとっては長年にわたって苛立ちの種であり続けている。最近まで米中関係はライバルであると同時に協力関係にあった。しかし、トランプ政権は中国政府との協力要素を事実上ゼロにしてしまった。そしてそれを背景に日中関係が悪化し、日本を取り巻く安全保障環境が大いに複雑化していくことを日本政府は非常に恐れている。」

さらに専門家らは、イージス・アショア導入において巨額の国費を投入しなければならない事実が今回の計画断念の決定に重要な意味を持っていたと分析している。

イージス・アショアの建設には当初、1基あたり約800億円かかるとされていた。しかし読売新聞によると、この建設計画が進むにつれイージス・アショア2基の建造費は7000億円に跳ね上がった。

この費用に関して、ストレリツォフ氏は以下のように指摘している。

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「新型コロナウイルスのパンデミックで、日本の財政は深刻な影響を受けた。その上、米国の対中貿易戦争に伴う経済リスクもある。これによって日本のGDPは何パーセントか減少してしまうため、日本政府の莫大な支出は必至だ。これらの理由から、日本政府は節約を余儀なくされているのだ。」

一方、軍事アナリストであり、ロシアの防空博物館のヴィクトル・クヌートフ館長は、イージス・アショアは時代遅れの代物だと分析している。

「イージス・アショアは、軍事開発業界ではすでに過去の防衛システムだ。世界は今、将来性のある超音速兵器技術の開発に積極的に取り組んでいる。イージス・アショアは(日本に配備された場合)北朝鮮の発射ミサイルは撃墜できるが、近くには中国もある。ところが中国の超音速ミサイルに対するイージス・アショアの効果はゼロで、そういった標的に命中できるとしたら、偶然の産物に過ぎない。その一方で中国は事実上、超音速兵器の製造の最終段階にある。日本の指導部は間違いなく、現代のこうした軍事開発の傾向を考慮し、米国のイージス・アショアに巨額の費用を投入しても全く役に立たないことを理解している。」

さらに米誌のナショナル・インタレストは、将来的に世界の戦略的バランスに深刻な影響を及ぼす恐れのある兵器は、超音速兵器であると指摘している。

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