日本には石炭火力が140基ある。うち114基は1990年代初頭に建設された低効率の発電所とされているが、比較的新しい高効率の26基は今後も維持される。日本政府は炭素排出削減プログラムと再エネ利用への移行の一環として、石炭火力の段階的廃止のための具体的なスキームを7月中に策定する考えだ。これは日本のエネルギー政策の転換点になると読売新聞は書いている。
国際エネルギー機関のデータによると、世界の二酸化炭素排出量の40%は石炭由来であるものの、世界のエネルギーシステムにおいて石炭は主要な燃料であり続けている。現在、77ヶ国が発電用に石炭を使用しており、うち13ヶ国は2030年または2040年までに石炭火力の廃止を表明している。中国とインドが石炭火力の廃止を表明すれば、世界の石炭消費は確実に減少に転じるが、今のところ両国はそのような意向を表明していない。それでも、国際エネルギー機関の専門家は、世界の石炭エネルギー投資のピークは過ぎ去り、石炭産業は「劇的な減速」のフェーズに入ったと考えている。
石炭需要が最も大きいのはどこ?
ドイツでは2038年までにすべての石炭火力を廃止する計画を政府が承認した。原子力発電所の新規建設も中止したドイツでは、現在、エネルギーを主に火力発電から得ており、うち60%では燃料に石炭が使われている。イギリス政府は2050年までにCO2排出ゼロを達成することを目標に、2025年までに石炭火力の段階的な廃止を進めると約束した。
フランスでは石炭火力が4基稼働している。2020年までに石炭火力を廃止する計画だったが、現在は2022年というより現実的な時期が挙がっている。フランスのエネルギー政策は原子力と再エネのバランスの段階的な構築を目指している。
世界で最も石炭を消費しているのは中国である。それにインド、アメリカ、ロシア、ドイツ、日本が続く。中国ではこの10年で石炭火力発電所の建設が急激に進んだが、巨大な太陽光発電施設や風力発電施設が登場したことで、火力発電所の稼働率は低下するようになった。とはいえ、中国全土の電力に占める「新たな再エネ」の割合はまだ小さい。石炭消費の世界的リーダーである中国では、現在、世界のCO2排出量の30%が排出されている。エネルギー部門の脱炭素化は始まっているものの、そのスピードはゆっくりだ。
インドでは、太陽光発電と風力発電の計画が進められているものの、排出量を積極的に削減する政策はない。そのため、2050年のエネルギーミックスに占める石炭の割合は40%以上になると予測されている。
どうして日本は石炭火力を廃止するのか?
日本のエネルギーミックスに占める石炭の割合は約30%である。石炭の割合は2030年までに26%に削減される予定だ。どうして日本はこのような決定をしたのだろうか。そして何が石炭火力を代替するのだろうか。国際エネルギー情報分析サイト「EES EAEC」のイリヤ・ダニロフ編集長によると、日本がエネルギー資源としての石炭に舵を切ったのは、2011年の福島第一原発事故後、すべての原子力発電所が止まったことによる、やむを得ぬ措置だったという。
日本の石炭の代替が何になるのかを心配する必要はないと専門家は言う。「日本では、水力、地熱、風力、太陽光、ペレットを燃料とするバイオマス発電など、再エネの開発が進んでいます。日本政府は原発の再稼働によって2030年までにエネルギーミックスを最適化することを目指しています。そこでの原子力の割合は20~25%です。さらに有望な一次エネルギー源には水素もあります。例えば、2018年2月、全国の水素ステーション網の発展を目的とするJapan H2 Mobility社が設立されました。この会社は2022年までに水素ステーションを88ヶ所に建設し、その後もさらなるネットワークの拡大を目指しています。」
ダニロフ氏によると、日本の決定は石炭供給国を直撃するという。「日本が世界最大の石炭輸入国(2019年は世界の石炭輸入の17.6%は日本)であることを考えると、今回の日本政府の決定は伝統的にエネルギー石炭の供給国であるオーストラリア(61%を供給)、インドネシア(15%)、ロシア(11%)を直撃します。石炭はこれからも長期にわたって、「ダーティ」ではあるが比較的安価なエネルギー源として発展途上国で需要があるでしょう。経済が低迷する中、こうした国々では再エネの発展は難しいですから。」
ちなみに、日本では石炭火力と海外の石炭プロジェクトへの資金援助の中止を求める「NO COAL JAPAN」運動が人気を増している。