20世紀後半、米国は世界の経済大国、技術大国としての自らの地位をより強固なものにした。国際的な決済の主要通貨をドルのみとする国際金融システムが確立され、世界銀行や国際通貨基金など、経済発展のための主要な機関の本部はワシントンに置かれている。米国は、自国の技術を基礎とする国際的なインターネット網の普及から、マイクロエレクトロニクスに至るまで、長年にわたり、世界の技術革新の牽引力となってきた。1970年代以降、加盟各国の発明の保護を目的とする特許協力条約が機能し始めてから2019年まで、米国は特許件数で常に1位を占めてきた。そしてソ連邦崩壊後、米国には国際政治の舞台におけるライバルも存在しなくなった。こうして、米国を中心とした政治、経済、技術における世界秩序が確立されたのである。
また現在、国連では、食料農業機関、国際民間航空機関、国際電気通信連合、国際連合経済社会局という4つの特別機関を中国の代表が率いている。標準化のための国際機関における中国の代表部も徐々に存在度を拡大している。そして、中国企業は、これまで米国企業がリードしてきた分野を含め、世界の市場を席捲するようになってきた。2020年の初頭、ダウンロード数がもっとも多かったアプリは米国のフェイスブックではなく、ティックトックであった。また50以上の通信事業者が、ファーウェイの機器なくしては活動できない状況となっている。さらに2020年上半期、中国企業が誘致した金融株投資は、世界のほぼ半数を占める。
ロバート・デイリー氏によれば、中国は米国との対立、米国との決別を望んでいない。しかし、もし今後さらに状況が悪化すれば、中国も宣戦布告を受け入れることになると指摘する。そうなれば、中国は既存の国際金融システムに代わる独自の決済システム、独自のエコシステムを作り、技術標準を制定することになる。そして、世界には二極化が生まれ、世界の国々はこの2つの社会経済および技術発展モデルのどちらを選ぶのかという選択を迫られることになるのである。
これについて、スプートニクの取材に応じた中国現代国際関係研究院の専門家、チェン・フェンイン氏は、中国は新たな世界秩序の構築を目指していたわけでも、世界での孤立を望んでいたわけでもないが、米国の行動によって、自国を守り、報復措置を取らざるを得なくなったと説明する。
「ここにあるのは、二極化の追求ではなく、保護的な根拠が強いと思われます。ファーウェイは、独自のエコシステムKungpengの構築についても、自社を保護するための行動であり、決別に向かうためのものではないとしています。つまり、世界に2つのシステムが構築されたとしても、これは保護的な目的のものであり、分離を意味する訳ではないと思います。何れにしても、11月の大統領選でどのような結果が出るのかはまだ誰にも分かりませんし、時が答えを示してくれるでしょう。現在、多くの国が保護の立場を取っているという状況です。中国は分離を望んでいるわけではありません。世界は1つであり、分離することは不可能です。わたし個人的には、現在、世界秩序の再計画、再構築が進んでいるように思います。すべての国は互いを認めなければなりません。いずれにせよ、国際情勢は深刻な変化を遂げています。中国は依然として、グローバリゼーションの条件の下での国際協力を望んでいます。しかし、一定の独自のゲームを行うというのも、まったく普通のことです」。