英空母の太平洋派遣がパワーバランスに与える影響は?

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最新鋭の英空母HMS Queen Elizabeth(R08)がポーツマスの拠点で航海に向けた準備を進めている。2021年初めに太平洋に向けて出発し、そこで米海軍と合同演習に参加する可能性がある。

このことには政治的誇示と中国に対する一定の圧力という以外に、軍事技術的な側面もある。HMS Queen Elizabethは他の空母とは本質的に異なる艦船なのだ。

その違いとは、排水量や艦載機数などではない。汎用空母として設計されたこの艦船は多くのタスクを遂行できるのだ。

まず1点目に、この空母は海上の司令部である。HSM Queen Elizabethは英海軍の旗艦であり、艦上には、世界中の英海軍の戦闘艦を指揮できる海軍本部と司令センターに必要な施設と設備が備わっている。

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2点目として、この空母は外国軍の代表者を受け入れることができると伝えられている。おそらく、一時的な訪問を受け入れるという意味ではなく、合同司令部から艦隊の指揮に参加するという意味であり、同盟国の海軍本部の代表団を受け入れられるという意味である。こうした代表団にも施設や、暗号通信を含む通信が必要であるため、それらが備えられているということである。もしそうだとすれば、この英空母はNATO加盟国、安全保障面のパートナー、米国の同盟国たる日本、オーストラリア、シンガポールの海空軍も指揮できるということだ。

このことはとても重要だ。広大な太平洋とインド洋において多くの艦隊や航空群の行動を調整する統合司令センターができるのだ。同盟国はこれまでのようにバラバラではなく、お互いを支援しながら一緒に行動する。これは極めて大きな優位点だ。

© 写真 : Public domain/U.S. Navy/Capt. Jim McCallHSM Queen Elizabeth
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HSM Queen Elizabeth

3点目として、この英空母は大きくなく、艦載機はF-35B戦闘機24~36機、ヘリコプター14機である。比較すると、最新性の米空母USS Gerald R. Ford(CVN-78)はF/A-18F戦闘攻撃機を75機以上搭載できる。しかし、この艦には飛行甲板上で航空機の武器装填を行う機械式武器処理システムがある。

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航空機は戦闘飛行後、すぐに給油が行われ、ミサイルや爆弾を装備し、機関砲に弾薬を装填しなくてはならない。飛行中隊が甲板に着陸し、整備士が甲板上に給油ホース、数十基のミサイルや航空機搭載爆弾を拡げると、空母は一時的に極めて脆弱な標的となる。敵機1機と爆弾1つで空母は火の玉となり、大きな損傷を受ける。

そこで、英国の設計者は、航空機の武器装填速度を6倍にする武器処理システムを開発した。このシステムを取り扱うのは約50人で、武器の輸送昇降オペレーションはすべて機械で行われる。通常、F-35Bと同様の垂直離着陸戦闘機AV-8Bの武器装填にかかる時間は約30分である。しかし、空母HMS Queen Elizabethの設備は航空機の武器装填をわずか5分で完了させる。

© AFP 2023 / Glyn KirkHSM Queen Elizabeth
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この武器処理システムは大きな戦術的優位性となっている。英空母は1時間で最大100機の給油と武器装填を行える。また、24時間でこのようなオペレーションを10回も行える。これは空母にとっては大きな優位性だ。

このようにHMS Queen Elizabethは、敵が防御している島の奪取や、特定地域の空の覇権の奪取といった重要作戦にとって最適なツールとなっている。空母上の司令センターは艦艇、空軍、海兵隊のすべての戦力を統合することができるし、空母の技術面は強力な航空支援を提供する。

この空母が太平洋に現れることは中国に対するシグナル、とても深刻なシグナルである。


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