お金のために子どもを産む? 東京都、出産家庭に10万円の支援金

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母性 - Sputnik 日本, 1920, 14.03.2021
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日本の出生率はすでにかなり以前から低下し続けているが、2020年、新型コロナウイルスの感染拡大はこの状況をさらに深刻なものにした。自宅隔離とソーシャルディスタンスという条件の下、恋愛関係を「結婚して家庭を築こう」というレベルに押し上げる決断を下すのは難しいものである。また、より多くの時間を一緒に過ごすようになったカップルも、新型コロナによって、出産を先延ばしにしたり、控えたりする傾向が見られている。東京都は、出生率を向上するため、出産家庭に対し、子ども1人あたり10万円分の支援を行うと発表した。この新たなイニシアチブについて、「スプートニク」の記者がまとめた。

新型コロナの感染拡大は2020年の東京における雇用と収入の確保に影響を及ぼし、出生率を低下させた。4月から10月にかけて登録された妊娠届出数はおよそ60,000件で、これは2019年の同じ時期に比べ、10%の減少である。

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出生率増加のため、東京都は出産した家庭に財政的な支援を行うことを検討している。新たな方針では、出産家庭に子ども一人あたり10万円相当を支給することが検討されている。

なぜ10万円なのか?

これが承認されれば、今後2年にわたり、2021年、2022年度に子どもを出産した家庭を対象に、10万円相当の支援が行われることになる。しかし、この支援は現金支給ではなく、インターネットの専用サイトを通じて、育児用品などを提供するというものである。10万円という金額は、社会学的な多くの調査で、東京での平均出産費用が、他府県よりも約10万円多くかかるという結果に基づき、算出された。

「日本では子どもを産むことが最大の虐待である」

物価がもっとも高い東京では、出産費用はもちろん、育てていくのにもより高額な費用がかかる。

10万円はあっという間に使い果たしてしまい、長い期間にわたって必要となる子どもの養育費を考えれば、それは大海の一滴にすぎない。インターネット上には、そのことを揶揄するコメントが溢れている。

「貧乏人が金目当てで繁殖しそう。可哀想な子供が増えるぞこれは。」

「赤ちゃんをお金で買ってるみたいで不快感。金やるから、赤ちゃん作れってこと?」

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YouTubeのニュースへのコメントには次のようなものもある。

「今生きてる人にも配ってください。」

「金の撒き方が、偏り過ぎ!税金使うなら、全員に撒かないと」

「どう考えても。

やったー!

10万円もらえる!

子ども産もう!!!

とはなりません。」

「コロナ不安で減ってるのも確かにそうだが、あまりにもこの国が高齢者優遇若者冷遇だからだよ。日本に子どもを産むことが最大の虐待だと言われてしまうくらいだ。」

「支給する事はいい事だけど、根本的な解決にらはならない。「10万貰えるから産む」とはならないでしょ。産みたい、育てたい環境があるからだと思う。」

​「それでも、ワクチンができてコロナが怖くなくならないと産み控えると思う。」

​もう1つ、多くのコメントで指摘されている大きな疑問は、里帰り出産の場合にも支援が受けられるのかというものである。出産前と出産後に、母親をはじめとする家族の助けを得るため、故郷に戻って出産することを望む女性は多い。

「これって恒久的に続けないと意味ない施策ですね。里帰り出産の場合は適用されんのかな。もう少し練り直してほしいです。」

​一方で、たとえこの方針が完全なものとはいえないとしても、この10万円相当の支援によって、子どもを持つ可能性を下げることにはならず、また少なくともAI婚活を使って出生率を上げようとする試みや、両親が成人した子どもに早く孫を作れと促すことに比べれば、より現実的なものに感じられる。

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出生率向上のために金銭を支給する国は他にもあるのか?

給付金の支給によって、人口減少の問題を解決しようとしているのは、日本だけではない。国民の高齢化と出生率の低下は、多くの国にとって、少子化対策に取り組むための主要な動機となっている。

オーストラリアでは、出産した家庭には子ども1人あたりにつき、産後13週間の間に2,500ドル(およそ26万7,600円)が支給される。しかし、この「ベイビー・ボーナス」による出生率の向上は、この制度が導入された後数年に見られただけで、オーストラリアの出生率は今も低いままである。

一方、ロシアは2020年、「母親資本」と銘打った少子化対策プログラムに変更を加えた。それまでは2人目以降の子どもを出産した家庭に25万ルーブル(およそ36万1,800円)が支払われていたが、現在は1人目を含めて出産したすべての家庭に48万ルーブル(およそ69万4,500円)が支給されることになった。この少子化対策は、不安定な国内の経済状況による出生率の低下によって行われたものであるが、2007年には短期的とはいえ効果が見られ、1人目の子どもの出産が大幅に増加したことから、政府は今回も同様の成果を期待している。

しかも2020年、ロシアでは人口の自然減(死亡率が出生率を上回る)が2倍以上増加し、出産の数は2002年以降、最低のレベルとなった。

しかしながら、給付金の支給は夫婦の出産を後押しする唯一の方法ではなく、またもっとも効果的なものとはいえないかもしれないということを忘れてはならない。出生率を上げるためには、子育てのための支援(幼稚園や保育所の確保など)を拡大したり、より長期的な有給の産休を認めたり、父親を子育てに参加させていくことなども重要な課題として残されているのである。

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