国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、サミットの開幕を前に、今回のサミットは、世界の気候問題において貢献しようとしていない一連の国々に、それを促すチャンスになるとの見方を明らかにした。またグテーレス事務総長は、今回のサミットが、11月にグラスゴーで予定されている国連の気候会議を前に開催された点に注目した。この期限までに、パリ協定に参加するほぼ200の国々が、気候変動問題に関する目標を引き上げ、対策を強化することが期待されている。
国連のデータによれば、過去10年間で、地球の気温は人類史上もっとも高い指標にまで達した。2020年10月には、北極の氷の面積が記録的な数値にまで減少し、大規模な火災が発生し、洪水、干ばつ、ハリケーンもより頻繁に発生するようになっている。生物学的多様性は失われ、砂漠が広がり、海洋の水温は上昇し、プラスチックごみに汚染されている。学会では、2030年までに化石燃料の採掘を6%削減しなければ、状況はより深刻なものになると言われている。
サミットで各国は何を約束したのか?
米国のジョー・バイデン大統領は、2030年までに温室効果ガスの排出量を2005年比で半分にまで削減し、2050年までに排出量ゼロを目指すと言明した。さらにバイデン大統領は、この問題は、どの国も単独で解決することはできないものだと強調した。
これに対し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、CO2の排出量の削減は難しいことではあるが、実現可能なものであるとの見解を明らかにした。大統領は「ロシアは広大で、地理的にも、気候的にも、また経済構造にも特徴があるが、それでもこの課題は実現できるものだ」と述べた。またプーチン大統領は、1990年以降、ロシアは温室効果ガスの排出量を、31億トンから16億トン(二酸化炭素換算)にまで半減したことを明らかにし、「その結果、現在、ロシアのエネルギーバランスの45%が、原子力発電を含めた低排出エネルギー源となっている」と述べた。
日本の菅首相は、サミットで、日本政府は2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年比で46%削減するとの課題を据えたと述べた。これまで日本は26%の削減を目標としていた。菅首相はまた、日本は国連の「緑の気候基金(グリーン・クライメイト・ファンド)」に最大30億ドル(およそ3,263億円)を拠出することを明らかにした。
国際エネルギー機関のデータによれば、ここ数年間で、二酸化炭素の排出量がもっとも多い上位5カ国は、中国、米国、インド、ロシア、日本となっている。
「地球表面の温度は過去100年から150年の間に1度上昇しましたが、このことは非常に様々なリスクを孕んでいます。それは、世界の海面水位の上昇、自然災害の増加、干ばつ、洪水、火災、永久凍土の融解などです。そして、その気温上昇の主な原因が、人間の活動によるものであり、とりわけ温室効果ガスの排出であることに疑問を抱く人はいません。気候変動に関して重要なことは、まず、温室効果ガスの排出量を削減し、気温の上昇を招くような破壊的な結果を出さないようにすることですが、他方で、それに適応することが大切です。つまり、経済活動や人間の生活を気候条件に合わせていくということです。この適応というのは、さまざまな条件を持つ個々の地域、都市、居住区によって異なる問題であるとすれば、二酸化炭素の排出量削減はグローバルな問題です。なぜなら、もしもある国が排出量をゼロにまで削減したとしても、その他の国々が排出を続ければ、気候変動は止められず、正直に排出量を削減している国すらも犠牲となるからです。
ですから、この問題を解決するためには、世界の連携、世界の尽力が求められています。またこれが重要なのは、積極的に気候問題や環境問題に取り組むことが、現代世界において経済的な競争力を持つために必要不可欠な条件となっているからでもあります。なぜなら、気候変動政策が厳しくなればなるほど、カーボンフットプリントが表示されるさまざまな商品に対する規制がより厳しくなるからです。商品を製造する企業は、温室効果ガスの排出量を削減するため、さらに努力しなければなりません。EU(欧州連合)は、2023年から、気候変動対策にあまり積極的でない国からの輸入品に対して、国境炭素税を導入するとしています。総じて事態はきわめて深刻です。そしてこれは自然によって決定づけられたことなのです」。