モスクワ国立心理教育大学の研究チームによれば、現代の社会において、自分の外見、容姿に対する不満を原因とするうつの問題が若者たちの間で深刻となっている。こうした問題を引き起こすもっとも大きな要因となっているのが、いわゆる身体的完璧主義、つまり美の基準を満たすことを必要以上に意識した自己形成のあり方である。過去20年の間に、美の基準は大きく変わった。とりわけ女性の間の変化は著しく、20世紀から21世紀の移行期には、不自然に痩せた体が標準であったが、現在は、ウエストは細く、腕の筋肉は鍛えられたスポーツ体型が標準となっている。
モスクワ国立心理教育大学、カウンセリング・臨床心理学科のアーラ・ホルモゴロワ助教授は、「マスメディアの中の理想的な体型は、修正や加工などを使って歪められたものです。そのイメージは非現実的かつ不自然なもので、それを実際に達成することは不可能であり、またそれにより人々にネガティブな感情を引き起こし、自分を受け入れられない状態を強いるものです。そしてフィットネスやトレーニング、過酷なダイエットによってそれを達成しようと時間と労力を無理に、そして無駄に使うことになるのです」と述べている。
美の基準が変わることにより、身体的完璧主義的な兆候を診断するツールも見直しが必要となってくると研究者らは考えている。そこで研究者らは、「身体的完璧主義の3要素による測定法」という新たな診断方法を考案した。
ホルモゴロワ氏は、「わたしたちは、若者たちを対象に、この方法論がどれほど有効かを確かめました。研究にはロシアの異なる大学の18歳から23歳までの女子学生が参加しましたが、自分の外見や容姿に自信がないことと、うつや不安障害の兆候とは密接な関係があることが証明されました。
このツールは、学生の間で、うつ病を発症するリスクが高い人たちを選別するのに利用できると研究者らは断言している。また、個人の不適切な行動(行き過ぎたトレーニング、絶食ダイエットなど)や外見に対する不満、精神状態の悪化を見出すための精神的な援助を行うのに有益だとも指摘している。
ホルモゴロワ氏は言う。「臨床心理学科では、高等教育機関や学校で身体的完璧主義の予防プログラムを展開するための前提条件をまとめています。重要なのは、それらが科学的根拠に基づくものであり、現代の国内外の研究データに裏付けられていることです。わたしたちが作った身体的完璧主義のアンケートは、こうしたプログラムを練り上げ、実現するのに有益であることは疑いようもありません」。
研究チームは、この新しいツールは精神衛生上の方策の取りまとめ、また過去10年で若者の間で急増している摂食障害、うつ、不安障害などの予防策を講ずる基礎になると考えている。国際的な研究チームによれば、問題の大きさはすでにエピデミック的な性格を持っている。
今後、研究者らは、近年の身体的完璧主義の変化や構造を研究し、また身体的完璧主義と、自分の体型への不満、精神疾患、非建設的な方法での理想の追求などとの関連についても研究を続けていく計画だという。